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分散処理剤散布作業に用いる船舶は、専用の大型船から必要により散布装置を装備する小型船舶まで様々である。作業規模が大きくなると小型船舶はその貯蔵性能から適当ではない。船舶の貯蔵設備に限度がある場合には、濃縮型分散処理剤を使用することが最良である。しかしながら流出油が流出源から離れて移動するようになると、いかなる船舶であっても、油層に向けての操船は上空の航空機からの誘導に頼る場合が多い。

専用の散布装置が利用不可能な場合には、消火ポンプとホースを使用することもできる。しかしながら、炭化水素溶剤ベースの分散処理剤は、事前に水で希釈されると界面活性剤の効果がなくなるので、この場合に使用してはならない。一方、濃縮型分散処理剤はエダクターで海水中へ混合されるが、ポンプ流量もしくは過剰水量の排出によって排出量を調節して、分散処理剤の濃度を10%にする必要がある。これらの手法は、限られた範囲における小規模の流出の処理に適している。

専用散布装置のひとつとして、船舶に搭載した散布ブームから分散処理剤を散布する場合は、図3-4-6aに示すように処理対象の油層中を表面攪拌板で曳航して必要な混合を行うことができる。この散布装置の稼動時においては、通常分散処理剤を定量散布するため、油に対する処理剤の比率の変更は、船舶の速度を変えるか、散布ブームを一部停止することによって調節する。撹拌板は通常散布ブームに取り付けて曳航するが、船舶の設計上、散布ブームは船央または船尾に取り付けることが多いため、船音波の影響を受けやすい。

濃縮型分散処理剤は、希釈せずに使用した方がより効果的であり、このとき混合エネルギーが少なくて済むため、適応性が高くなり油の処理率が高くなる。また、図3-4-6bのように散布ブームを船首に搭載できるので、船首波による問題を解決し、散布時の高速航行が可能である。さらに大抵の船舶は船首側のフリーボードが大きいため、散布ブームを長くすることにより掃集幅を大きくし、処理率を向上させることができる。

 

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