日本財団 図書館


(2)単独船舶による作業

複数船舶によるオイルフェンスの展張、曳航作業の調整は非常に難しく、実際の流出油対応への実績は少ない。これに対し、小規模ながら1隻の船舶と回収装置で構成される対応システムは海況3までの条件下では比較的良好に作動するとされている。このシステムは、図3-4-3に示すような油収集、凝集用の短いフレキシブルオイルフェンス、油をかき寄せるためのアームまたは吸着モップ、油を吸い上げる高性能ポンプまたは油回収装置、および回収油貯蔵タンクから構成されており、複数船舶による複雑な作業に比べて実施しやすいが、油掃集幅に限度があり、これはほぼ船幅の長さとなる。

 

091-1.gif

 

以上、流出油の機械的回収作業における防除資機材の運用方法について記述したが、破砕波の有義波高が3.5〜4mを超える場合、機械的回収作業の効率は急激に低下する。図3-4-4は、有義波高と機械的回収作業の効率の関係を表した有効性評価曲線である(Rodal, 1997)。この曲線から推察すると有義波高4m前後で回収効率がほぼ0になることがうかがわれる。

破砕波が発生すると、流出油はほとんど海面から姿を消し、海中に取り込まれる。油が比較的大きな油滴に分裂した場合、これは波高とほぼ等しい水深まで潜行する。この場合、油滴は天候回復とともに海面に再浮上する可能性がある。油滴径が小さい場合には、自然に海中に拡散する。またこれらにの現象加え、破砕波が発生するような条件下では、波動によって流速が増大するため、海面上及び海面付近に残っている油分をオイルフェンスに取り込んで回収することは、不可能である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION