にする点は多い。
昨年1月、日本海で発生したNakhodka号事故は、荒天時の外洋における油流出事故の典型例と見ることができる。この事故では、元来、静穏域用として設計・配備されている我が国の油防除資機材が効率よく稼動しないことから、海上における回収率は極めて低く、回収の多くは海岸における手作業に頼らざるを得なかった。
また、冬季の日本海においては、悪天候が続くことから作業船は太平洋側等、他海域に移動しているため、防除活動用の船舶の早急な手配・調達が難しい点が、防除対応を一層困難なものにした。
さらに民間防除組織の通常活動範囲は港湾を主体としており、サルベージ業者を除いては外洋での対応能力を有していないことが多く、今後、外洋での事故対応にあたっては、サルベージ業者を中心とした民間防除組織の再構築を図る必要があり、対応体制、防除資機材双方の見直しが急務である。
回収油の処分については、国内法制度のもとで産業廃棄物として処理されたが、通常の処理手続きに基づいて処理が実施されたため、膨大な量(約47,000kL)の油性廃棄物の処分がスムーズに出来なかった。
以上、本節で取り扱った事例では、分散処理剤適用の決定、防除にあたっての指揮者の判断の迅速性・的確性、最優先事項の選択、回収油の処分、荒天時への対応能等が問題点としてクローズアップされた。また、これらの問題点は、回収資機材の能力を除いては、多くの場合、これらを管理する防除対応体制に帰結することが示唆された。事故発生から防除実施までのプロセスの系統だった確立が、外洋における油流出事故への対応能力を向上させる重要な手段のひとつであることが、これらの事故例から読みとれた。また、資機材の観点からは、分散処理剤の有効性とその使用が環境に対する影響が少ない点が確認できた。