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に湿地にて)、サンドブラスト、その他を含む。化学的処理には物理的除去あるいは生物分解を助ける界面活性剤その他の化学剤の使用がある。生物学的処理には自然の生物分解を刺激促進する栄養剤の使用、耕作行為や酸素の使用、あるいは油分解微生物の添加を含む。それぞれの方法は、“絶好の機会”にのみ、かつ一定タイプの海岸線や特定の油や燃料に対してのみ最高の効力を発揮する。過去の経験によって、海洋大気局(NOAA)及びその他諸機関は、対応実行者に特定の状況下での最良策を案内してくれる「海岸線対策規範」を使用することで、不適当な対応をしないようになった(例えばWhitney 1994年)。

 

3.1 海岸線浄化の効果

「効果」とは、流出発生時の油量あるいは残存量と比較して、どの程度の油が除去されているかを意味する。どの方法もl00%効果的ではない。場所(砂浜、港湾内の人工構造物)によっては、ほぼ全部の油が手作業、物理的又は化学的処理によって、海洋資源に殆どあるいは全く影響を与えずに除去され得る。しかし、(エクソン・バルディーズ号の場合のように)岩や小石の海岸線及び湿地では、海洋生物にそれ以上の打撃を与えないためには、漂着油のほんの一部しか除去できない。全体的に見て、エクソン・バルディーズ号油流出事故発生後、アラスカの海岸線に漂着した油の4〜9%が海岸線処理作業によって除去された(Wolfe地 1994年;Mearns1996年)。残りは、冬の吹雪や自然の生物分解で除去された(Michel他 1991年)。現在、少量の油が海岸線の裂け日数箇所に入り込んで残っている。それ以外の湿地等のような場所では、焼却処理がかなり効果的であろう(Mendelssohn他 1995年)。

 

3.2 海岸線浄化の影響と制限

海岸線動植物の多数が、軽微で適度な油汚染状況下で生存していることを繰り返し言及するのは大切なことである。動植物の生存を維持するために採ることができる方策ならどんなものでも、生態系回復過程を加速するであろう。しかしながら、生存している海洋生物が、死んでしまうかあるいは油と共に除去されてしまうかすれば、生態系回復には長時間かかる。我々は、浄化方法の制限の幾つかは何であるのかを徐々に解明している。例えば、豊かな生態系を持つ地域で水圧洗浄を行う場合、水温は40℃を越えてはならない(Mauseth他1996年)。海岸線化学浄化剤の中には油よりも毒性の強いものもあるし、弱いものもある(Fingas他 1995年からの感覚的引用)。このように豊かな生態系を持つ地域では、毒性を最低限に抑えたもののみを使用するべきである。生物修復剤にも毒性物質を含んだものがあるので、豊かな生態系の地域では使用を制限しなければならない。一方、かなり油汚染された湿地での焼却処理は、草木にとっては破壊的であるが、渡り鳥にとっては油汚染の危険性をすばやく低減してくれ、結果的には、湿地を迅速且つ完全に回復してくれる(Mendelssohn他 1995年)。このように、各々の方法にはそれぞれ限度がある。

対応処理の間に浮かんでくる本当の疑問は、「どこまで浄化すれば充分か」である。このことは総意を得て決定しなければならないが、この総意には、それぞれの海岸線の感度と残存油を最終的に浄化する自然の過程との評価を含むべきである。

 

4.0 生物修復

生物修復とは何か、又、海岸線浄化におけるその役割は何か。生物修復とは、環境中の油の自然生物分解を促進しようとする試みである。生物分解とは、バクテリアが油の中にある特定の化合物を化学的に分解する過程を言う。自然あるいは活性化された分解を受けやすい化合物には、アルカン及び多環式芳香族炭化水素(PAH)がある。(対応あるいは回復作業の時間枠内で)活性化された分解さえも受けにくい化合物には、アスファルテンやワックスがある。上記の化合物の中でも、PAHは、毒性及び発癌性があるので、生態学的に最

 

 

 

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