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低エネルギー環境―生物修復の可能性

低エネルギー環境は、主にミルフオード・ヘブン自身の内部の海岸線に見られる。高エネルギー海岸線の場合と同様に、堆積した油の除去の第一段階は3月初めに大方完了した。ミルフオード・ヘブン内で最も大がかりに採用された方法は汚染された砂の除去と海水による洗浄であった。この方式の処理手順が環境に対する長期的な影響を最小限に抑制することはすでに立証済みである(Baker 1995年)から、大抵の現場はこれによっ て自然に復旧するように放置することができる。本稿では、保護環境下で自然の修復過程を活性化するための補助的な生物修復処理の実行可能性を論議する。

アラスカで、エクソン・バルディーズ号事故の後、初期の浄化作業の後で堆積物の内部に残っている残留油を処理するために生物修復の方法が採られた(Pritchard及びCosta 1991年;Bragg他1994年;Swamell他 1994年)。米国環境保護局(US EPA)とエクソンの科学者達により窒素と燐の供給源が添加されたが、これにより油の生物分解の速度が上昇すること、したがって油汚染された海岸線のより急速な汚染除去が促進されることが分かった(Pritchard他 1992年;Bragg他 1994年)。

ブルウエル湾の選定された場所で、2種類の処理方法の効果を試験するためにランダムに配置したブロックが使われた。3つの小区画からなる3つのフロック(長さ9mで幅O.9m)を、互いに1.25m離して、海に対して直角になるよう配置した回初めにリチウム・トレーサー実験を行ったところ、小区画間での処理の移動を防ぐにはこの配置が適当であることが分かった。各々のブロック内の一つの小区画は実験の基準として残され、一つの小区画は肥料(硝酸ナトリウムと燐酸水素ニカリウム)を海水に溶解させて週一回散布して処理され、残りの一つの小区画は無機肥料をゆっくり放出して処理された。この実験の開始時点で、測色計を用いて行われた総石油炭化水素量(TPH)測定により、全小区画を通じてかなり一貫した汚染が見られ、小区画の陸側末端で高い油濃度が存続していたことが分かった。

ブルウエル湾での生物修復処理から得られた結論は次のとおりであった:

・ 燃料重油とフォーティーズ原油の混合物の生物分解速度が増加した。

・ 処理はブルウエル湾の海水の養分含有量に対して影響がなかった。

・ 影響を受けやすいカキの胎芽の生物分析によって判定されたように、環境に対して検出できる毒性の影響は存在しなかった。

・ 肥料を低速で放出したものと週一回の頻度で散布したものはともに有効であり、このことは前者の方法が海岸線の自然回復を促進させる上で対費用効果がある方法であることを示唆する。

 

海岸線浄化作業のまとめ

フォーティーズ原油がおよそ72,000t、燃料重油がおよそ480t流出したにもかかわらず、我々の推定では、乳化したフォーティーズ原油のおよそl0,000〜15,000tと、燃料重油のおよそ430〜460tだけが海岸線を汚染したと考えられる。流出した油のうちおよそ2%が2月29日までに回収され、3〜7%が堆積した油をそれ以上除去するのが困難だった区域の海岸線に漂着したままになった。

したがって、1996年3月以降は漂着油に重点を置いた海岸線流出油浄化作業が、実際には全流出油のおよそ3〜7%を対象とするにすぎないが、主要な活動となってきた。高エネルギー海岸線で使われた方法は自然修復、磯波洗浄、分散処理剤散布である。低エネルギー海岸線で使われた方法は自然修復と放水洗浄であった。最終仕上げ手順としての生物修復はブルウエル湾には適していることが分かった。

 

結 論

シー・エンプレス号の座礁により、72,000tのフォーティーズ原油が周囲に流出し、過去の上位20件の油流

 

 

 

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