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分散処理剤作業の動員

ミルフォード・ヘブンの入口部でのシー・エンプレス号の座礁に対応して、MPCUは英国国家緊急防災計画を発動し、流出油の広がりを見積もるために同船上空を飛ぶよう監視航空機を配置した。作業上の決定を行うのに必要な油層の位置と規模についての情報は、MPCUの側方監視空戦レーダー(SLAR)、下方監視ビデオ、赤外線・紫外線カメラを装備した専用のリモートセンシング航空機2機によって提供された。分散処理剤担当の7機のDC3は分散処理剤を積込み、指示があれば夜明けと共に直ちに噴霧作業を始めることができる状態に準備し、現場へ飛んだ。

油汚染の主要部分の移動方向に関する予測と予想される油の風化状態が油流出モデルOSISによって提供された。このモデルはMPCUにより作業対応モデルとして使われているものである。このOSISはAEATechnology(NETCEN)とBritish Maritime Technologyによって開発された(Leech及びWalker1992年)。

OSISモデルの実行とリモートセンシングモデルの実行との間の関連付けの一例として、2月15日夕方と16日午前中、OSISは、流出した油が主として18〜20ktで吹いていた西風のもとで南東の方向、リンネイ岬とその浜辺に移動すると予測した(図1)。油の流出は現地の海洋学的特徴が、流出油の経路に大きな影響を与える可能性がある海岸の近くであったため、MPCUのリモートセンシング航空機を使って油層の経路を早い時期に確認することが重要であった。予測された経路は側方監視空戦レーダー(SLAR)の映像により2月15日の23時02分に確認され(図2)、油の海岸への漂着は2月16日07時00分の昼間の報告によって確認された。

このリモートセンシングと予測モデリングの組合せは、対応作業の計画立案に役立つよう、事故の対応期間を通じて使用された。この事故が立証したことは、大規模な流出事故が発生し、汚染対応機関に直ちに通知がなされれぱ、現存の、リモートセンシングと海上試験で確認されている予測モデリング(即ちOSIS)の技術が、作業についての決定を下すために必要な情報を提供してくれる、ということである。シー・エンプレス号油流出事故から得られた教訓の一つは、このリモートセンシングとモデリング情報を詳しく分析し周知するには、対応作業の一部として専門の作業チームが必要である、ということである。このチームは英国における将来の大規模油流出事故に際して動員されることになる。

英国で分散処理剤を使用する際に採用されている方策は、リモートセンシング航空機は散布用航空機を油層が最も厚い区域へ差向けること、散布用航空機は海面にある油が分散するまで、油層が最も厚い区域の上空を繰返し飛ぶことである。期待どおり、分散処理剤は座礁したタンカーから流れ出している新しい油に対して最も効果があった。したがって、分散処理剤の使用に関するMPCUの方策は、初期段階において、タンカーからの大規模な新しい油の流出に目標を定めることであった。これらの流出油が分散処理剤により成功裡に処理できたら、次の目標はより沖合にある更に風化した比較的大きく点在する油であった。これらの油は、おそらくは夜間の干潮時に流出したため、直ちに分散処理剤で処理できなかった結果によるものと思われた。

 

蛍光測定とリモートセンシングによる分散処理剤の有効性の監視

シー・エンプレス号から流出している新しいフォーティーズ原油に対する分散処理剤の使用で分かったように、時には、分散処理剤により分散した油が目に見えるプルームを海面直下に形成するため、上空からの観察だけで十分である。しかし、NETCENの実地試験において報告され(Lunel 1994年,1995年)、油流出時の分散処理剤使用に関するIMO/UNEPのガイドライン(IMO 1995年)に組込まれているように、これまでの実地試験により、水中にはプルームの形跡がなくて分散処理剤の使用に伴う油の強い集中が起こり得ることが分かっている。このことは、分散が通常の目に見える徴候なしに生じることがあり得ることを示しており、したがってIMOのガイドラインは従来の上空からの観察に加えて海面下の油の濃度を測定する必要があることを提案している。

 

 

 

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