日本財団 図書館


他1994年)。前述のように、シー・エンプレス号事故の場合には、かなりの風速であったにもかかわらず、機械的回収(機械的回収システム4基を使用)の結果、流出油の1.5〜2.5%が除去された。これによって、およそ3,500〜6,000tのエマルジョンが海岸線を侵す事態を免れた。

 

分散処理剤の散布

シー・エンプレス号事故における分散処理剤使用の主な計画は、自然分散過程を促進して油を海面から取り除き、それによって区域内の海鳥、海岸渉禽類、潮間帯の脊椎動物及び無脊椎動物、多くの観光用の浜辺等に対する環境上の影響を抑止することであった。分散した全51%のうちどれだけの割合が自然分散によるものなのか、そしてどれだけの割合が分散処理剤使用によって分散したものなのかを推定することは明らかに難しい。なぜなら、重大な流出事故の対応作業中に、実験のために対応を実施しない区域を残すのは、環境に敏感な場所が汚染されるおそれがあるときには現実的な選択ではないからである。

しかし、NETCENはシー・エンプレス号事故が起こる前にフォーティーズ原油を使って実地試験をすでに行っていた(Lunel他1995年;Lune1及びDavies1996年)。これらの注意深く管理された、油の実地試験では、油の分散段階の定量的測定が行えるよう、そして又、分散処理剤で処理されない油の実験管理ができるよう、フォーティーズ原油を定常的に流出させた。これらの実験により、フォーティーズ原油の6%(3〜9%の範囲)が、シー・エンプレス号油流出事故の際の代表的な条件の下では、流出後最初の30分間に自然に分散することが分かった(Lunel他1995年;Lunel及びDavies1996年)。同様の定常状態の流出でフォーティーズ原油が分散処理剤Dasic Slickgone NS(シー・エンプレス号事故時に使われた分散処理剤の一つ)により処理された時には、最初の30分間に分散したフォーティーズ原油の割合は、平均して22%(16〜28%の範囲)であった(Lunel他1995年;Lune吸びDavies 1996年)。

実地試験では、全分散22±6%のうち自然分散の割合は6±3%、化学分散はほぼ16±9%であった。したがって、これらの実地試験における自然分散と化学分散の比は、シー・エンプレス号事故の場合と同様の風速条件のもとで、1:2.7(1:1.8〜1:8.3の範囲)であった。もし、シー・エンプレス号事故の際にも同じ自然:化学分散比が生じたとすると、分散した51%のうち37%(29〜45%の範囲)は化学分散によるもので、14%(6〜22%の範囲)は自然分散によるものであったと推定される。

自然分散と化学分散との間に明確な境界線を引くことは不可能である。しかし、自然分散過程のみによる6〜22%の分散範囲は我々の実地試験の経験および現場検証モデル0SISの結果と一致している。

 

234-1.gif

 

この期間中に、自然分散の速度を高めるために約446tの分散処理剤が使われた(分散処理剤を噴霧体積の多い順に挙げると次のとおりである:Finasol 0SR-51、Dasic LTSW、Dasic Slickgone NS、Dispolene 34S、Superdispersant 25、Enerspere 1583、Corexit 9500)。フォーティーズ原油に対する各種分散処理剤の相対

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION