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海上で回収された油―2%(1.5〜2.5%の範囲):

平均含水率50〜70%の約4,000tの油中水エマルジョンが回収作業により海上から除去された。次いで、このエマルジョンは静置して油と水に分離させるために分離タンクと潟に保管された。海上の作業から製油所に回収された油の量は1,500±300tと推定される。

この油は、次にテキサコ製油所で油中に混入している海水塩が精製過程で触媒を汚染しないように、非常に低速で油の浸出法によって再処理された。これは油処理全体の2%に相当する。

 

海岸線から回収された油―2%(1.5〜2.5%の範囲):

海岸線から回収された油の内訳は、製油所で再処理された油20%を含む液体エマルジョン2,500t(油の量は精油所では500±200tと測定された)、農地用のl0%含油廃棄物3,500±500t及び農地用5%含油砂7,800±200tであった。したがって、72,000tの内、海岸線から回収されたのは約1,250±250t(2%)に過ぎなかった。

 

海岸線の残留油―5%(3〜7%の範囲):

海岸に残留した油の推定量は、流出の初期段階で詳細に調べた幾つかの場所での測定値から外挿して求めたものである。それによると流出した油のおよそ5〜9%が海岸線に漂着し、2%が回収され、3〜7%が1996年2月29日の時点で海岸線に堆積して残ったと推定される。

 

分散(減算による)=51%(43〜59%の範囲):

油が大量の海水中に分散し、急速に希釈されるということは、分散した油の量を正確に定量化することができる有効な監視プログラムを作成できないことを意味する。しかし、海上で蛍光測定を行ったところ、分散過程は流出油の動向を決定する上で重要な過程であることが分かった。

現在までに得られた数値によると、もし40%±5%が蒸発し、2%±0.5%が海上で回収され、2%±0.5%が海岸線から回収され、最初に堆積された油の清掃後に5%±2%が海岸線に打上げられたまま残ったとすると、減算法により、油全体のおよそ51%±8%が自然分散と化学的分散とによって分散したものと思われる。

 

流出油の動向に及ぼす対応作業の影響

ひとたび油が環境中に流出すると、油の影響は多かれ少なかれあらゆる方面に及ぶ。流出油への対応の役割は純粋に環境に利益をもたらすことである(Baker 1995年)。時間の経過とともに、自然の過程は油を細粒に分解し、生物分解する。油流出への対応は、次の主な2つの方法に要約できる:

・ このような自然過程に逆らって、油を濃縮し、環境から取除く。

・ あるいは、分散と分解の自然過程の速度を高める。

第一の方法は油流出の直後に環境から油を除去する点で優れているが、他方、海面の油を分散し希釈しようとする自然の過程に逆らうという欠点がある。自然過程に依存する第二の方法は、流出油による環境への打撃を軽減させる点で有効であるかもしれない。例えば、ブレア号の環境への影響に関する2年間にわたる調査の結論は、環境への重大な影響は存在しない、というものであった。ブレア号の場合ほど気象条件が厳しくない大半の油流出事故では、自然過程を活性化することによって純粋に環境に利益をもたらす。

 

海上での機械的回収

海上での機械的回収では流出油の最大約10%が回収可能であるということが一般に認められている。ブレア号事故の場合は、事故の発生前後が暴風雨であったことから、油は海上からは全く回収されなかったが、エクソン・バルディーズ号事故の対応では、機械的回収に大きく依存しており、海面油の8%が回収された(Wolfe

 

 

 

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