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限界状況又は悪天候下での機械的油回収の効率

有義波高が3.5〜4mを越える砕波の場合、機械的回収作業は急激に不可能になる。図2は4m前後で効率がゼロになることを示している。時折、悪天候下において効率の高い機材が喧伝されることがある。幾つかの理由で、これは誤解を招くものだと信じている。大小に関わらず砕波が発生すると、油は殆ど水面から姿を消し、水中に取り込まれる。油がかなり大きい油滴に分裂した場合、波高に等しい深さの水中にまで分布する。この場合、油は天候が回復すると通常再び水面に浮上する。油滴が比較的小さいと、自然に水柱の中へ分散する。更に、海面あるいは海面付近に残っている油は波によって流速が増加するため、オイルフェンスに取り込むことが困難である。

 

C. 海底油田からの原油の継続的流出に対応する手段。海底で発生する事故への対応

海中で暴噴した油あるいは海中パイプラインからの漏油を回収する目的の油回収作業は、海面あるいは海面付近の流出油回収の場合と殆ど同じである。主な相違は、油がより広範囲に拡散し、その結果海面により薄い油膜を形成するという点である。これは、より多くの機材(特にオイルフェンス)が必要になるという意味で回収作業が複雑になる(図1参照)。オイルフェンスの損傷は、漂流油を囲い込み、次いでオイルフェンスを前進させて集める際によく起こり、そのため必要なオイルフェンスの予備量が比例的に増大する。

海底からの油の流出速度が相当高い場合、最近の油田跡(1996年の北海)で、油は非常に小さい油滴になり、低い速度で上昇することがわかった。1996年の油田跡の場合では、水面に形成された油膜の厚さは5〜20μmの程度であった。このときは、油膜が薄すぎて回収できなかった。オイルフェンスから水面に伝わったエネルギーが、油を水中に分散させてしまった。このことは平穏な気象条件下でも海中流出油を回収できない場合があることを示している。

大洋の海底漏出源からの油の漏洩事故に対応したり漏洩を止めたりすることは、余りにも複雑でここでは説明しきれない。しかし、遭難船からの油を完全に抜き取ることに成功した例がある。その様な作業についての報告は入手可能である。

 

D. 油流出対応機関採用の浄化資機材 -その仕様と選定理由- 

ノルウェー大陸棚における石油探査に続いて、1970年代後半から1980年代前半に石油生産が開始されると、ノルウェー当局は油流出に対する緊急防災の規定を導入した。その規定については本文で既に述べたとおりである。更にノルウェー当局は石油産業に対して、明文化された規定に適応することができるという証書を作成するよう指示した。石油産業がこれを達成できるように、ノルウェー汚濁管理局は油回収装置の試験及び開発を目的とする油流出の許可を与えた。やがて明らかになったのは、北海及びバレンツ海の条件に適合し、かつ政府の基準を満たす使用可能な装置は市場に存在しないということであった。

開発及び試験の計画が開始された。油を放出しての試験・演習が外洋で年に一、二回行われた。外部請負業者及び汚濁管理当局双方が試験油の放出・回収を監視した。1987年から1988年にかけて、トランスレック・システムが開発され、業界は好天時には300m3/時の回収率を記録することができた。外洋での試験で、気象条件の悪化に伴って急激に回収率が低下することが示されたが、有義波高2.5mまでの波浪中において油回収率8,000m3/日という規定要件は満たされた。

 

 

 

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