理由があったと思いますが、特に、やはり法律の規制がゆるめられて、他のより安価な代替的な手法を認めたためだと思います。しかしながらこの手法は兼用の様々な資機材を使うので、やはり専用の資機材の方が兼用よりも良いことが多いということには同意していただけると思います。
ミアーンズ: 私は海洋生物学者として懸念しているのですが、一般に国内的にも世界的にも研究開発、特に新しい技術の開発が減少傾向にあると思います。世界の新技術の研究開発をやっている方々の10%ぐらいの方が今日この部屋に集まっているのではないかと思うのですが、業界ではインフラストラクチュアや、ハードウェアの面等にはかなりの投資が行われておりますが、研究開発はどうなるのでしょうか。誰がやるのでしょうか。MSRCがやめてしまった研究開発はどこが行っているのでしょうか。
卜一ンショフ: それについては多分レッサードさんがご説明なさると思います。レッサードさんは海洋保全協会の研究開発監督委員会の委員長をしておられました。海洋保全協会はMSRCを支援しているグループであります。いかがでしょう、レッサードさん。
レッサード: それは正に私が言いたかったことです。あえて質問しませんでした。MSRCが提言した研究プログラムは、米国石油協会に対して長い時間をかけて採用するように説得致しました。もちろん年600万ドルの予算は継続できませんが、少なくともプログラムの中の最も良いところが、より広範囲の資金で継続できるようになりました。米国石油協会というのはMSRCよりもかなり多くの資金を業界から集めているので、いわば資金のより適正な配分ということになります。また、我々は政府機関、業界にも影響力を行使することもできますし、エクソンの資金も得られますので、MSRCがもはや資金提供しなくてもかなり良い研究開発を継続していくことができると思います。
鈴木: 現在保有している16隻の防災船の運用限界はどのくらいでしょうか。どの程度の気象、海象条件に対応して運用が可能なのか、それからもう一つは、ハワイ海域、あるいはアラスカの寒冷地、また大西洋岸海域によって気象、海象条件がだいぶ変化しています。船の船形、あるいは使用する資機材も地域ごとに当然変わってくると思いますが、運用を決定する基準は何でしょうか。
卜一ンショフ: 限界のご質問については、二つの段階でお話したいと思います。まず、海象条件に合わせての限界ということがあります。これらの船舶は、油濁法のもとで「定義された悪天候」下でも作業可能な設計であります。その上限がどのぐらいかということは正確には分かりません。どこまで海象状態がひどいかということによって変わってまいります。
実は今朝、工藤さんとナホトカ号事件の話をしていたのですが、10mもの波高があると対応できません。6mでも対応するのは難しいと思います。それは非常に酷しい波高です。油濁防除船は、数メートルの波高で作業できるように設計されます。
搭載している資機材はノルウェーで設計されております。これはフランクモ-のトランスレックシステムで、北海で試験が行われました。北海はご存じのようによく悪天候になります。しかしながら、作業の限界がどれぐらいかは分かりません。しかし、時間の関数としての限界という点から申しますと、これら船舶は30日間、全く補給なしに洋上で作業できるように設計されています。そのための食料も搭載し、ディーゼル油、様々な補給品も乗せております。まったく補給なしで30日間連続的に洋上で作業できるように設計してあるのです。