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存知のダイヤモンド・グレース号の事故があったということで、頻繁であったが、これら全てに資機材の貸し出しをした。ここでは特にナホトカ号のお話を申し上げたい。ナホトカ号事故に際して、国内の資機材基地からどの資機材をどれほど貸し出したか、保有資機材に対して貸し出し比率はどれほどになったかを示す表である(表5参照)。国内の基地別の資機材保有状況とともにご覧戴きたい(表6参照)。

昨日のご説明にもあったように、今回の事故は非常に長い海岸線を汚染する事故であった。したがって、あちこちの自治体をはじめ船主側からも資機材の貸出要請があった。この表を現実に照らして言えるのは、実際に使われた比率はこれほど高いわけではないが、貸し出した比率はこんなになってしまった、ということである。今回の事故は、流出油が漂着した海岸線が極めて長いという事情があるが、25年ぶりの海の大事故であり、借り主の事前の予防という意味もあってこれほど多くの資機材が出ていったということである。今後統一的な指揮命令あるいは防除の決定が行われるようになれば、こんなに沢山の物が出ていくことはないのかもしれない。

またこの間、資機材の貸し出しに付随して、1月の事故発生直後から3月末までの約3ヶ月間に、石連事務局ならびに全国6ヵ所の基地、及び内外資機材メーカー、同輸入代理店等から延べ400人以上の資機材操作指導員等を現地に派遣し、要請に応じて操作の指導にあたった。それでも被害を受けた海岸線が長く、漂着油等の回収地点が多くて十分な指導ができたとはいえない。

ここで少し写真をご紹介したいが、福井県三国町に漂着したナホトカ号の船首部分とその周辺に展張した固形式のオイルフェンスで、船首部からの流出油が沖合いへ漂流するのを防ごうとするものである。

次は資機材の輸送風景の一つで、日本全国から資機材輸送をしたが、北海道からは船で運ぶと時間がかかるということで、石川県の要請に基づいて自衛隊のC-130型輸送機で千歳から小松へ輸送した時の積み込み風景である。

同じく自衛隊員が石油連盟の油回収機を使っているところである。この場所は三国町の海岸で、このあたりは水深が非常に浅く、回収機のフロートが使えない場所である。また、岩場の多い危険な場所も自衛隊員が受け持って作業をしたので、その時のスナップである。10m以上もある崖下で、回収機のフロートをはずして手作業で油をホッパーに入れ、ポンプとして産上に移送しているところである。

このようにして海上、海岸から回収された油は一時的な措置として福井港の埠頭に急きょ作られた大きな穴(ピット)に貯蔵されたが、その貯蔵された油を今度は船で廃棄物処理場へ輸送する。その時にピットから船にゴミ混じりの回収油を移すために回収機のポンプを使ったわけだが、海草、ロープ、その他のゴミといったものが沢山あるので、写真のようなカゴを作り、なかにポンプを入れてそれからこれを丸ごとピットの中に落とし込み、船への移送を行ったわけである。しかしこれでもかなりの海草、ゴミがポンプの中に狭まり、時々分解して清掃しながら使うということを繰り返した。これは鉄板でつくった一時貯留槽(ピット)でここにも油がいっぱい入っていた。このすぐ傍に停泊したガット船に、カゴに入れた回収機のポンプでピットから回収油を移送したが、この中が空になった後は、貸し出した資機材をここで洗浄するということで、洗浄用のピットとしてここを使った。傍に置いたファスタンクに真水を張り、その真水で洗浄の仕上げをしたということである。

3月になり、あちこちに貸していた資機材が殆ど戻ってきて、この福井港の埠頭に勢揃いしているが、すべての資機材は写真のようにコンテナに収納して保管しており、コンテナごとトラックに積んで、国内どこへでも、或いは飛行機に乗せても運べるということである。この広い埠頭があったおかげで250mもある充気式オイルフェンスを全部引き出して汚れや破れがないかをチェックすることができた。

4月20日には、めでたく船首部を海中から引き揚げ、台船に乗せて検査・処理場へと輸送して三国町の海岸から異物が取り除かれた。

 

 

 

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