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それぞれの国では国営石油会社があり、油濁対応センターをもっている。その対応センターには人もいれば資機材もあるし、移動用の設備や船も持っている。それぞれに緊急時対応計画もお持ちになっている。しかしながら大きな事故が起こった時には、これだけでは足りないと言うことが起こりうる。そのような時には災害の関係者として貸出要請をすることにより石油連盟の近くの基地から資機材を借りることができる、石油連盟は貸し出すに当たって資機材の使用料は無料であるが、輸送にかかる費用、使用に伴う資機材の清掃費、補修費は負担して頂くということである。石油連盟は平常時には緊急時にいつでも使えるように契約業者によるメンテナンスを行い、いつでも使える状態で保管しているので、事故で資機材が不足した時にはアクセスして下さいと言う考え方で、あらかじめ提示している約款に基づいてこれらを確認した上で、契約を締結するということである。契約は、借り主から石油連盟への「貸出要請書」の提出と、これに対する石油連盟「承諾書」の受領によって成立し、石油連盟は当該基地に対して要請のあった資機材の貸し出し・搬出を指示する。搬出は借り主が基地に来て行うのが原則であるが、急時の迅速性・利便性等の判断から、要請があれば借り主のために運送業者の斡旋を行い、借り主の指定する場所まで資機材の輸送を行うよう手配をする。

システムはこのようになっているが、実際に日本には同じような資機材を持っている人がいないので、これを実際に貸し出しした時に使える人が少ないというのが我々の最大の悩みであり、今回のナホトカ号の場合、それからその前のシー・プリンス号のときもそう実感させられた。しかしながら人材を育てると言うのは非常に時間のかかる仕事であり、認識はあっても徐々にしか進まないと言うのが現実である。

石油連盟はゆっくりとではあるが、この悩みを解消するために演習・訓練を継続している。

演習は2種類ある。

一つは石連の基地が主体となり、資機材の維持管理者が中心となって、独自に緊急時を想定した演習を行い、あるいは石連加盟会社の防災担当者とともに演習し、または石連海水油濁処理協力機構(POSCO=PAJ Oil Spill Cooperative Organization)とともに演習するものである。

もう一つは、石油連盟加盟関係会社以外の組織、例えば海上保安庁(MSA)や海上災害防止センター(MDPC)あるいは海外基地の所在する国での港湾管理当局等との間で行う合同演習若しくはこれらの組織が行う演習に参加するものである。

石油連盟は資機材の使用が可能な人材を増やすための教育訓練も行っている。

資機材の実地操作訓練講習会といっているが、2日間のトレーニングコースで、国内6ヵ所の基地で行う。おおむね半日程度を資機材のメカニズムとシステムの学習のための座学、残りの1日半は実際に資機材を動かして貰うこと、及び反省会をプログラムに組んでいる。

このトレーニングに参加するのは石油連盟加盟会社の担当者、及び石油輸送関連会社の担当者などが主で、参加者数は20人程度に制限している。参加者全員が資機材を動かせるようにする、と言うのが目標であることから、人数はこの位が適当と考えている。

トレーニングの講師は、現在のところ、座学については先程のPOSCOの中にある油濁専門委員会という組織の委員が行い、実技については維持管理会社のスーパーバイザーが指導するという体勢を取っている。次に資機材の貸し出し事例について若干説明したい。

表4に石連資機材貸し出し事例の大きなものを挙げてあるが、まず先程述べた韓国麗水で1995年夏におきたシー・プリンス号事故の事故である。この時には瀬戸内海の2号水島基地からコンテナ7つを関釜フェリーを使って釜山に輸送し、釜山から麗水にトラックで陸送した。この時には、資機材を操作する人もいっしょにという要請があったのだが、操作する人は勿論、指導する人もこの時は出せなかった。

その後、昨年1996年12月に、ドンユウ(東友)という中国の貨物船の事故が北海道の奥尻島であった。今年の1月になってナホトカ号の事故があった。4月には対馬でオーソン3号の事故があった。それから7月にご

 

 

 

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