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経験によれば、高粘度油の回収には排出ホース内の摩擦抵抗を減らすために回収装置に水を注入する必要がある。長さ100mのホースを使用することも多いが、ポンピングには使用圧力が5-6kg/cm2でも不十分である。

SFTは、遠心ポンプの代わりにスクリュー・ポンプを使用することによって最高の結果が得られることを学んだ。一般にスクリュー・ポンプは高い圧力を生じ、同時に油への水の混入を少なくすることができる。その結果、遠心ポンプを使用した場合よりも低粘度の油を作業対象とすることになる。又、遠心ポンプを使用すると、水中油エマルジョンを生成し易く、その結果油の分離に長時間を要し解乳化剤も役に立たなくなる。

さらにSFTは解乳化剤の使用は重油に対して余り効果はないが、軽油及び原油に対しては使用できることを経験から学んだ。

海岸線における防除作業

大部分の油が海岸に達するだろうことは初日から明らかであった。そのため現場指揮官とそのスタッフのための司令所が大部分の油が到達すると予想される場所に置かれた。現場指揮官はSFTから出されたが、残りのスタッフは地元の関係当局から集められた。

現場指揮官はヘリコプター、ボート及び地元の観測者による観察に基づいて海岸沿いの作業の調整を行った。浄化作業計画は、損害の危険度に従って優先順位を決め作成された。海岸線は30km以上にわたって影響を受けた。作業を始める前に海岸線の適切な調査を行うことが重要である。打ち上げられた油量を正確に推定することは、油の分布が均一ではないので、ほとんどの種類の海岸では困難である。しかし最も適切な海岸線の浄化作業を組織し、その作業に必要な人数を確認するためには、概算にせよ油量を推定することが望ましい。

総体的な汚染範囲は、まず現場上空を飛行して目視により調査することができる。汚染された海岸線の代表的な短い区画に存在する油の、より詳細な調査は徒歩で行う。このような調査は油量の異なる可能性のある別の区画あるいは海岸線の特性の異なる他の場所において繰り返さなければならない。海岸線の調査は、同時に接近ルート及び浄化の実現可能性を確認する良い機会である。

行動の優先順位は、起こりうる利害の相剋を考慮に入れて決定する必要がある。例えば、最も効果的な技術を利用すると、環境上影響を受けやすい生物の生育地を台無しにするかも知れないし、一方、快適な環境の追求が、そのような考慮に優先するかも知れない。現場毎に均衡のとれた判断が必要となる所以である。

”アリサン号”からの油流出は、大規模な流出事故ではなかった。全体で約150tの油が流出した。それでも作業コストは、約5百万米ドルに達した。520tの油の緊急荷卸し作業の大成功によって、浄化作業の経費が何百万も軽減されたことは間違いない。

 

討論

ゲインズフォード: 石油のプラットホームの緊急防災計画については、石油会社に計画立案の過程で分散処理剤を一つの選択として考えるようにと指示なさったという風に理解していますが、そうなのでしょうか。

ネールラン: 常にそうでした。これは目新しい政策ではありません。

 

 

 

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