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* 油回収設備を搭載した数隻の船舶を保有する沿岸警備隊との特定の協定

* 特殊装備の監視用航空機1機

* 重大な油流出事故の場合の国際的な支援協定

これらの三段階の緊急防災システムは、要請に基づき互いに支援することが特別に義務付けられている(第47項)。同時に国は、必要と思われる場合はいつでも率先して事故に対処する行動の指揮をとることができる(第46項)。

ノルウェーにおける緊急防災計画の法的及び組織的事項の細部にわたる制定作業はこの三つに分けた緊急防災システムに基づいて行われることになる。改善点の探究は継続的に行わなければならない作業である。例えば、この数年で海軍・沿岸警備隊とノルウェー汚染管理局との間の密接な協力体制によって国の緊急防災システムがかなり強化された。これにより油流出事故への対処に関して沿岸警備隊に法的権限が付与され、法律の仕組みに一定の改正がもたらされる。

法律上及び組織上の問題解決の仕方は、それぞれの国によって異なる。誰しも、これが最終解答だと断言できるものではない。しかし緊急防災計画の策定における政策、法律上及び組織上の諸問題が、国の総合的な緊急防災システム制定の基礎であることについては異論のないところであろう。

 

第二部

a. 外国籍の船舶による公海上の油流出事故への対応

b. 外国籍の船舶による自国領海内における油流出事故への対応

にかかわる法律上の問題

 

はじめに

航行の自由は国際慣例法に定められた伝統的な一般原則である。しかし、トリー・キャニオン号(1967年)、アモコ・カディス号、エクソン・バルディーズ号(1988年)、ブレア号(1993年)等幾つかの重大な油流出事故、そして今回のナホトカ号の事故は沿岸国の経済的権益に基づいて、この原則に対して制限を設ける必要があることを明確に示している。本論文の第二部においては外国籍の船舶による油流出事故に関するこれらの制限に焦点を絞って検討する。

 

a. 公海

「公海」という用語は領海外の海域で、公海及び専管経済水域(EEZ)を含むところと解釈されている。1982年12月10日に制定された国連海洋法会議(UNCL0S)の第3条においては、「全ての国はこの会議に従って決定された基線から12海里を超えない範囲でその領海幅を設定する権限を有する」と定めている。幾つかの沿岸国が12海里の領海を宣言している。ノルウェーは外界を4海里としている。公海上においては、UNCL0Sの第87条、第1項及び第58条、第1項に従い自由航行となっている。

しかし、海難という事態における必要の原則に基づく国際慣例法は、沿岸国に対して航行の自由に優先する権限を与えている。この権限は1969年11月29日の油汚染事故の場合の海事裁判所管轄水域における介入に関する国際条約によって特に示されている。この条約の採択は1967年のイギリス海峡のコーンウォールの外海で発生したトリー・キャニオン号の油流出事故が直接の要因となっていた。この条約は少なくとも59ヵ国により批准され、1975年5月6日に発効した。国際海事機関がこの条約の事務局となっている。

 

 

 

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