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a) 民間の緊急防災システム

重大な汚染に関するノルウェーの立法措置は1981年3月13日に制定された汚染防止法の第6章に定められている。同法の第40条は、一般原則として「重大な汚染を発生させる可能性のある企業の全ての経営者は汚染の防止、発見、阻止、除去及び汚染の影響の抑止のために必要な緊急防災システムを備えなければならない」と定めている。言い換えれば、緊急防災システムの制定義務は民間企業に課された義務の出発点である。関係当局の役割は民間の緊急防災システムに関する「詳細な規定を定める」ことである。第41条には「汚染管理官庁は、規定又は個々の決定に基づき、重大な汚染を発生する可能性のある作業の場合には緊急防災計画を提出し、承認を受けなければならないと規定することができる」及び「汚染管理官庁は、緊急防災計画の承認に対し特別の条件を付すことができる」と定められている。

「重大な汚染を発生する可能性のある」ノルウェーの主要産業としては海洋石油及びガス産業がある。これらの要件を満たすために、操業している石油・ガス産業はノルウェー海洋石油業者協会(NOFO)と称する特別の組織を設立した。NOF0は流出油に対処する機材及び関連職員を備えた補給所を5ヵ所設けている。緊急防災計画の策定、承認取得の義務は個々の企業に対して定められたものであるが、実際にこの責務を果たすのはNOFOである。しかし特定の油田の特別な緊急防災計画は、NOFOのシステムに加えて個々の油田について策定する必要がある。これは掘削装置からの小規模な油流出事故に対処するシステムであり、且つ大規模な油流出事故の場合に初動するシステムである。石油ターミナル、タンク基地、製油所等の陸上の産業も全て個々に油流出緊急防災システムを備えている。

b) 自治体の緊急防災システム

汚染防止法の第43項は「自治体は、自治体内で発生しあるいは損害を与え又民間の緊急防災システムでは対応しきれない重大汚染事故等の稀なケースに対処するのに必要な緊急防災システムを備えなければならない」と定めている。この意味からすれば、自治体は海岸沿いの緊急防災システムの基盤であるとさえ言える。自治体の緊急防災システムは、海岸及び領海内(ノルウェーは領海を4海里としている)におけるより小規模な油流出事故に対処できるものでなければならない。自治体の緊急防災システムは52の自治体間の緊急防災地域で組織されている。それぞれは、民間企業の場合と同じように、承認された緊急防災計画を備える必要のある特定の執行機関を設けている。自治体の緊急防災システム内の組織は港湾当局、警察、消防、技術職員等からの人員で構成されている。これらの組織が保有する環境上影響を受けやすい地域、局所的な海流、風の状態等の大要についての知識は流出油の処理作業において欠くことのできないものである。自治体の組織は海浜及び海岸線における油の浄化作業においても必須なものである。

c) 国の緊急防災システム

「国は自治体の緊急防災システム…又は民間の緊急防災システムの管轄外の重大な汚染事故に対処する緊急防災システムを規定しなければならない」(汚染防止法、第43,2項)。言い換えれば、民間又は自治体の緊急防災システムではカバーすることのできない油流出事故に対処するのは国の責任である。これは現実には船舶からの重大な油流出事故を意味する。自治体の緊急防災システムによって対処できない重大な油流出事故の場合には、油流出事故に対応するのは国であり、ノルウェー環境省の下部機関である汚染管理局である。国の油流出事故対応システムは次のような構成となっている。

* 本部及び2機関

* 海岸沿いに設けられた15ヵ所の流出油対策機材補給所

* 5隻の小型船舶

 

 

 

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