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条件に近い状態で行われるが、現実の事故の場合は、理想条件とは大幅に異なるのが普通であることを認識することが重要である。

廃棄物管理の事前計画は、最終処分地や処分方法ばかりでなく、安全な中間保管場所の確保のためにも重要である。我々の計画にかかわる「海浜データと浄化指針」には、廃棄物運搬用の大型容器や内張りした貯蔵用の穴等に入れた油性廃棄物を緊急、暫定的に保管する様々な用地について記載されている。このような暫定措置が改善されないまま続くようであれば、正式に認可された処置をとる必要があるので、できるだけ速やかに環境庁に連絡を取らなければならない。

油流出事故から発生する廃棄物の範囲についても配慮する必要があり、最適の処理方法を検討しなければならない。油流出事故からは、固形廃棄物として、油の付着した砂や小石、油の付着した海藻や投棄物(木材やプラスチック)等の漂着物、又、防除作業において油が付着したモップ、スポンジ、オイルフェンス、防御服、玉ふさ等が発生する。

 

シー・エンプレス号

シー・エンプレス号は1996年2月15日の夕方、ミルフォード・ヘブンの港口で座礁した。州の油濁担当官でもあるダヴェッド州評議会の市民防衛計画機関の当直職員は、英国沿岸警備隊からの通報に応答し、地域の油流出緊急防災計画指定の油流出事故調整センター(OSCC)であるミルフォード・ヘブン港湾局の事務所へ赴いた。1996年2月16日の02:30に、JRCが要請され、MPCUが承認した。これは直ちに設置され、JRCグループの最初の説明会が07:00に開催された。同船はミルフォード・ヘブン港湾局の管轄区域内において遭難したので、同港湾局が初期の対応の調整及び管理チームの指揮を担当することになった。

海事チームは正式にはJRCの組織の一部ではなく、通常は最寄りの沿岸警備隊センターにおかれている。ミルフォード・ヘブンの場合には好都合なことに、JRCが設けられている港湾局に隣接していた。

ミルフォード・ヘブン港の油流出事故対応計画では、船舶を受け入れる石油会社は事故に対し最大級の支援を行うことになっている。この場合には、事故は港湾計画ばかりでなく、ダヴェッド州及び国の両方の油流出緊急防災計画にまで拡大することになった。

テキサコ社はシー・エンプレス号の座礁から30分以内に最初の事故対応センターを設置した。ペンブローク/アングル半島周辺の最初の海浜浄化作業はJRCの代わりにテキサコ社によって行われた。浄化のための主組織が設立されると、この作業はJRC内に完全に組込まれた。

ウェールズの地域関係当局の再編成が完了してから6週間しか経過していなかったため問題全体は更に複雑なものとなった。対応措置に重要な役割を果さなければならない多くの人々には別の関心事が優先していた。

実際に、事故に対応した主な職員の多くは3月31日に退職し、そのため新たに組織されたペンブローク州評議会の統一局に対して慎重な引き継ぎを行う必要があった。更に廃棄物取締当局、NRA(英国河川管理局)及びHMIP(英国汚染検査官)が再編成中であった。新しい環境局の廃棄物管理者は任命されていたが、職員はまだ地区評議会に属していた。

同程度の規模と複雑さを有する事故は全て、対応体制をテストし、その長所と短所を見つける良い機会となるものであり、シー・エンプレス号の場合も例外ではなかった。最初の数週問は長時間勤務と要求事項の多さのために極度の緊張を強いられた。事前計画が多くの分野において成果を上げていることが分かり元気づけら

 

 

 

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