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4.2 全ての海上浄化技術には厳重な制約や変動要因がある(天候や油の種類等は、海洋で処理できる油量に大きな影響を与える)。海上流出への汚染対策の有効性は、災害現場海岸からの距離、油の種類、風や潮、現場への資機材配備に要する時間等に依存する。

4.3 海上における最も望ましい浄化方法は、海面から油を回収することである。これは、海岸線への油の漂着を防ぎ、海洋及び沿岸における生物及び他の資源への損害の危険性を下げ、海岸から油物質を除去する際の高コストを回避する。しかし実際には、海上回収は決して完全に効果的なものではない。

4.4 海上の流出油は直ちに極めて広範な海域に拡散する。油1m3は、通常0.1mm厚で10,000?を覆う。蒸発は油の種類によって異なるが、総量の低下をもたらす。しかしこれは逆に粘性の増加を伴う。ある種の油では、一層粘性を増やす油中水エマルジョンが生成され、同時に油性物質の量を4倍に増やす。別種の油では、自然の分散が海面の油量を減らす。種々の過程が起こる割合は、油の種類と天候に依存する。海面に残留する油は、風と潮によって運ばれる。油中水エマルジョン及び付随する粘性の増加によって、油を分散処理剤によって処理することが難しくなり、又機械的手段によって回収することが次第に困難になる。

4.5 利用可能な油回収システムには様々なものがある一方、全てのシステムは、英国沿岸周囲の一般的な海面状態でも制約を蒙り、事故現場での配備に日数を要する場合がある。したがって、政府の方針では、分散処理剤の使用を英国を取り囲む荒れた海で効果があるとされる唯一の海洋浄化システムと位置づけている。しかしながら、1977年7月28日の英国下院で大臣による声明で説明されたように、こうした分散処理剤の使用に関する方針としては、一般に流出油が損害をひき起こさず、又脅威とはならない場合には、自然に蒸発分解させることが望ましいとしている。分散処理剤の使用は、それが効果的である可能性が高い場合、あるいは専門家の判断で英国海岸の鳥又は海洋生物に対する損害への重大な脅威がある場合、又は海上作業者が安全性の理由から必要であると判断した場合に、その使用が開始される。

4.6 この意見は、1994年5月に議会に提出された「より安全な船舶、よりきれいな海」という表題の、商船からの汚染防止に対するドナルドソン卿調査委員会において、同卿によって承認された。21.84項では以下のとおり述べられている:

「我々は、コストに関する多大な論議と注意深い検討の後、油汚染に対する英国の防衛の前線として分散処理剤の空中散布能力を保持することが正しいという結論に達した」

4.7 迅速な対応が不可欠(殆どの油が48時間後には分散処理剤に向かないエマルジョンになる)であるため、MPCUは最初の対応としての分散処理剤空中散布を開発し、請負契約に基づき、48時間で油14,000tを処理する能力を備えた分散処理剤散布用航空機を調達した。これらの分散処理剤散布用航空機は、側方監視レーダー及び赤外線・紫外線ラインスキャナーを備えた2機の契約航空機によって、散布作業の間指示及び管理される。

4.8 科学的根拠によると、大半のケースで流出油の生物学的影響は一時的であり、生態系はやがて回復し、その回復期間の長さは影響を受けたシステムのタイプによって変動する。MPCUや他の関係当事者(水産省及び自然保護団体等を含む)は、油が漁場、海鳥、生態学的に敏感な区域又は快適環境海浜に損害を与える可能性が高いかどうか検討する。損害を与えない場合、油が自然に分散するのを待つことになる。損害を与える可能性が高い場合、油の分散処理が成功する見込みは、表面に残留するよりも、水柱方向に分布することによる分散油の環境的影響と処理コストとのバランスで考えなくてはならない。

 

 

 

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