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の出力を低下させることなく、公共性を維持できた。〔図7〕

? 洋上回収への投入勢力と回収量

洋上の回収作業が一段落した3月初め頃に、次のように仮集計されている。

船艇(海上保安庁・自衛隊等)延べ約4,700隻

洋上回収された油水量(国関係)約5,700kL

(3) 沈没船体と湧出油監視

? 海難発生から10日後の1月12日に初めて沈没地点付近で浮流油を確認した。このため、同海域の監視を強化するとともに、油処理剤、航走攪絆による対応を開始した。

? 海上からの位置探査に引き続き、1月末から2月下旬に亘って海洋科学技術センターの無人ロボットにより、水深約2,500mの沈没船体の状況が詳細に潜水探査された。

また、2月中旬にはシップ・アンド・オーシャン財団の協力によりH.Rye博士(ノルウェー)による湧出点調査が実施された。

? 巡視船・航空機による湧出状況の観察や上記?の調査の結果から、3月末、運輸省の委員会は沈没船体と残存油の湧出に関して次のように評価を行った。

(a) 残存油量は3,700〜9,900kL

(b) 湧出油量は1日あたり3〜14kL。沿岸への漂着は考えにくい。

(c) 湧出は当分続くが、船体の破損が急進して大量漏出するとは考えにくい。

? 事故発生後5ヶ月の6月初めにおいてもなお、湧出油は日によって異なるが、直径約100mの範囲に約5mの蓮の葉状になって湧出した後、いくつかの筋状となり、全体的には幅100〜200m、長さ数kmの帯の範囲を浮流しており、帯の末端あたりでは風浪により自然消滅している。〔図8〕

 

2. 日本海と海洋汚染

(1) まず、我が国の周辺全海域における、船舶からの油による海洋汚染発生件数の推移は、〔図9〕に示すように近年は大幅に低減している。これは関係者が安全航行規制をよく遵守していること、荷役管理が厳格に行われていること、海洋汚染についての対策が徹底しているためであると考えられている。

〔図10〕は海洋汚染の発生を海域ごとにみたものであるが、日本海側の沿岸では船舶が輻輳する太平洋側に比べ発生の頻度は低い。

(2) 次に、日本海難防止協会の試算によると、日本海全域では実に年間1万隻近くのタンカーが航行しており、このうち、我が国に入港しないものが約半数を占めている。その航路は〔図11〕及び〔図12〕のように縦横にわたっている。これらの航路について注目すべきは、一つには、極東口シアへの中国や韓国からの安い重油を輸送する航路があり、運航費の安い老朽タンカーが使用されていることがあげられる。〔図13〕二つ目は、石油消費が年々増加する韓国への輸入航路であり、最近では同国周辺での様々なタンカー事故が報告されている。さらには、サハリン等の石油開発などに伴い、今後ますます日本海におけるタンカーの往来は複雑かつ多量となることが考えられる。

(3) 日本海の海象をみると、今回のナホトカ号の海難時がそうであったように〔図14〕、冬期には異常に高い波が出現する。また、海流と北西の強い季節風がすべて日本列島に向かっている。

(4) 以上のことから考察するに、今のところ日本海沿岸における海洋汚染の発生頻度は比較的低いものの、厳しい気象条件下での高船令タンカーの航行が次第に増加することを考えると、今後、日本海沖合での重

 

 

 

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