6 分割民営化後の新鉄道会社等の経営状況
1987年の国鉄分割・民営化後10年を経過したが、後述の長期債務の処理の問題を除き、概ね順調に推移している。
(1)輸送量の推移
?1987年以降も1991年までは、日本の経済は拡大し続けたため、旅客鉄道各社の輸送量も順調に増加し、当初の経営基盤の充実に大きく寄与した。特に新幹線を経営する本州3社の輸送量の増加は著しいものがあった。
しかし、貨物鉄道会社については、1991年までは順調であったが、1992年以降は景気後退の波を受け、さらに自動車輸送の拡大の影響を受けて、減少ないし横ばいである。
?収支状況の推移
本州の旅客鉄道3社は、予想を上回る輸送量の増加もあって、収支は事前の予想を大幅に上回ってきわめて順調な黒字経営を続けている。一方、北海道、四国、九州の3社は、当初順調に黒字を拡大したが、輸送量の伸びが停滞し始めるとともに、赤字を抑えるための「経営安定基金」の運用利率の低下により収入減になり、収支状況は若干悪化している。貨物鉄道会社についても当初は予想を上回る黒字であったが、輸送量の減少ないし横ばいの影響を受けて収支状況は悪化しており、経営は苦しい。
?職員数の推移
発足当初は、鉄道7社で199千人であったが、現在は鉄道業以外の事業に進出しているにもかからわず、192千人となり、生産性の向上が図られている。
7 残された課題-長期債務の処理
1987年4月の時点では、新会社等に引き継がせる資産・債務以外の資産・債務については「国鉄清算事業団」(特殊法人)が処理することとなった。当初は清算事業団が引き継いだ土地や新会社の株式をできる限り早期に売却して長期債務の圧縮を図る方針であった。ところが1985年頃からの景気過熱に伴う土地の売買に厳しい規制が課されることになった。旧国鉄用地についてもこの規制が適用され、2〜3年間事実上土地の売却は不可能となった。この間に長期債務の金利は急増するとともに、売却が可能となっても「バブルの崩壊」により地価が急落したため、予定どおりの収入をあげることができなくなった。
このため、現在所有する土地や株式等をすべて売却してもなお20兆円余の債務が残る見通しとなり(当初の見込みでは13兆円余)、現在政府部内でこの処理の方策について広範な検討が行われている。
なお、当初は「最終的には国民負担とする(税金で返済する)」と考えられていたが、現在我が国の政府の財政状況はきわめて悪化しており、この巨額な債務をどうするかは大きな政治問題にもなっている。