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たとえば、日本ではサイドランプを使用している、一般的に航行速度が速い、貨物のキャパシティがより重視されているなどである。新船建造時の資金調達条件は、日本のほうが英国よりもよさそうである。しかし、英国のフェリー会社が人件費の安い他国籍の乗務員を自由に使えるのに対し、日本のフェリー会社はきわめて高い乗務員人件費を捻出しなければならない。日本のフェリー会社は船を購入する(しかも常に日本の造船会社から)のが通常だが、英国では安い会社から必要に応じてチャーターまたはリースすることが多くなっている。どちらのアプローチがよいか、はっきりとした判断を下すことは難しい。というのは、判断するためにはフェリー会社の財務内容を詳しく分析しなければならないし、グループのなかのフェリー会社について個々別々の財務内容が示されることはまずないからである。

日本の港湾はほとんどが公有で、国からかなりの補助を受けている。対する英国の港湾はほとんどが民有で、補助は一切ない。英国のフェリー会社で自社港湾をもっているところは、新しいフェリーターミナル建設にも自ら出資しなければならないため、その分財務的にきつくなる。英国の民有港はすべて、満足のいく投資利益率を確保するために必要なあらゆる資本投資をしていかなければならないであろう。そして、国からの補助がないかぎり、英国の港湾料金が日本より高くなるのも致し方ないであろう(*24)。さらなる相違点として、港湾料金の設定(日本では規制がある)や停泊に必要な施設(日本のフェリーはサイドランプを使うが英国では使わないため)、フェリーへのトラック積載法がある。また、港湾のロケーションも日英で異なっている。日本のフェリーターミナルは発達した都市部のただなかに位置する場合が多いのに対し、英国では都市部でない沿岸部にあるのが普通である。船のターンアラウンドが速い、あるいは土地に余裕があるなど、沿岸港の有利は明確である。日本のフェリー産業ではシェアがやや分散している(主立った会社が12社)が、英国では2社が旅客・貨物の全市場のほぼ三分の二を握っている。その結果、日本のフェリー会社間では価格競争がさかんで、顧客にとってはメリットがあるといえるかもしれない。他方英国では、これほどの市場寡占状態が続くようであれば、競合の問題を考えていく必要が明らかにある。

他の輸送機関との競合という点では、日本では主に道路輸送産業がライバルである。道路輸送は一般的に輸送時間が短く、新しい高速道路や固定リンクの継続的建設も有利に働いている。また、トラック(スピード違反や過積載)に対する規制も十分行なわれていない。英国では、そのフェリーサービスがヨーロッパ大陸に向いていることから、フェリーの主なライバルといえばやはりイギリス海峡トンネルである。英国の国際フェリーによる旅客および貨物の海上輸送マーケットのうち、約15%が海峡トンネルに流れた。ただ、旅客はフェリーだけからでなく航空機からも流れたし、トンネルに流れた貨物の大部分は近海コンテナ輸送からで、フェリーは貨物運賃が一律50%も下がったとはいえ比較的影響は少なかった。最近P&Oとステナラインがイギリス海峡ルートの路線を統合したが、これで運賃水準が少しはましなレベルに回復するのではと期待されている。

有効な内航フェリーネットワークがあればモーダルシフトがどのように進むか、英国は日本からぜひ学ぶべきである。ただ一方で、英国の対ヨーロッパ貿易のダイナミックな成長ぶりとそのなかでフェリーが果たしている役割も、忘れてはならない。貿易価値で見ると、フェリーは今や英国の国際貿易全体の約50%の輸送を担っているのである。現在進められている関税障壁・非関税障壁撤廃の結果、英国経済の他のEU諸国経済との統合がますます進んでいるのは明らかである。ヨーロッパは、ひとつのとてつもなく大きな単一市場に急速になりつつある。「トラック」イコール「単一市場(国内市場といってもよい)」であり、「トラック」イコール「フェリー」であるから、フェリーはいわば経済統合を可能にする重要な要因のひとつといってもいいのではないか。事実英国では、国際貿易の輸送市場にフェリーがかなり食い込んでいる。とすると、英国に関するかぎりそれは確かである。

したがって、日本の業界および政府は、隣接するアジア諸国との貿易拡大の手段として、フェリー部門が果たしうる重要な役割について考えてもよいはずである。英国の国際貿易では現在、近隣諸国との近海輸送機関としてフェリーがよいとされ、圧倒的地位を確立している。フェリーはコンテナ船に比べてサービスのレベルが高い。たとえば、港湾内外での速度が速いし、柔軟性が高くさまざまなタイプの品物の輸送に対応できる。ヨーロッパの経験から学ぶべきことがあるとすれば、それはまさに「近海国際輸送では、フェリーは自然とコンテナ船にとって代わる」ということである。

 

最後に

 

この共同研究のためにインタビューを快諾してくださり、すばらしい情報を提供してくださった多くの方々に、感謝申し上げたい。また、この研究にともに取り組み、たゆまぬ努力と献身で貴重な貢献をしてくれた、港湾空間高度化センターの伊与久智明主任研究員と木村京子氏に対して、心から感謝の意を表したい。さらに、この研究に対してご助力・ご支援をいただいた同センターの戸嶋英樹理事長はじめ、常陸壮介理事・第一調査研究部長、滝野義和主任研究員、小田康弘主任研究員にも、感謝申し上げる。なお、この報告に間違いがある場合は、すべて筆者の責任である。

 

 

 

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