本州一四国間、本州一九州間を運航するフェリー会社は、中小規模のトラック輸送会社を主なライバルと見ているが、これらルートでは運賃引き下げ圧力がかなりかかっている。マリンエキスプレスの宮崎一川崎ルート(915キロ)と競合するトラック輸送会社は、1992年には20万円(1000英ポンド)であった運賃を、1997年には16万円(800英ポンド)に引き下げた。実に20%の引き下げ率である。
フェリー会社は、「トラックの速度制限違反や過積載に対する罰則規定が十分に適用されておらず、政府としてトラック輸送の拡大傾向に歯止めをかける動きもない。それどころか、公共セクターは新しい高速道路や固定リンク(橋やトンネル)を建設し続けており、状況は悪化する一方だ」と嘆く。現在、瀬戸内海に道路橋が3本ある他、南は関門海峡に本州と九州を結ぶ橋とトンネル、北には本州と北海道を結ぶ鉄道トンネルがある。このような容赦ない固定リンクの拡大は、長距離トラック輸送会社にはさらなるビジネスチャンスの到来となるが、内航フェリーサービスにとっては痛手である。
鉄道輸送は、道路輸送ほどの強敵ではない。というのは、鉄道のインフラは主に旅客輸送のためのものであるし、貨物輸送の時間という面でも大したことはない。小さな5トン積みの3メーターコンテナしか受け付けないし、出発時刻も魅力に欠けている。ただ、鉄道は運賃が安いのが強味。大赤字を出してもよしとされているのである。また、内航コンテナ船もフェリーの荷を一部奪い合うような形になっており、競合相手のひとつといえる。
日本のフェリー会社には現在、港から港までのサービスだけでなくドア・ツー・ドアのサービスを顧客に提供すべく、トラック輸送子会社設立の動きがある。マリンエキスプレス、ブルーハイウェイ、新日本海フェリー、東日本フェリーはいずれも、自社系列のトラック輸送会社をもっている。P&Oとノーフォークラインも、英国、アイルランド、ヨーロッパ大陸、スカンジナビアに広範な物流網をもっている。とはいえ、日英とも、他のフェリー会社の多くは陸送にはあまり関わっておらず、基本的には港から港までのサービスに従事している。両国ともに、顧客であるトラック輸送会社と真っ向から競合するような印象は与えたくないものの、ドア・ツー・ドアのサービスを求める特定の荷主の要望には応えられるようにしていく必要があるのではないかというのが、フェリー会社が抱えるジレンマなのである。
英国の国際フェリー市場では近年、特にイギリス海峡トンネルの出現もあって、競争が激化している。海峡トンネルの1996年の総取扱い量は、旅客840万人、乗用車200万台、トレーラーおよびコンテナ50万台を記録した。これは、海峡ルートフェリーの旅客市場全体の23%、貨物市場の24%に相当する量である。海峡トンネルの果敢な運賃設定方針は、フェリーおよび近海コンテナ船との間に熾烈な価格戦争を巻き起こした。1994年のトンネル開通以来、貨物運賃は50%も下落し、いまだ回復していない。高速フェリーや鉄道も運賃引き下げにでたため、近海コンテナ市場の多くがそちらへ流れ、コンテナ船を運航していた数社が倒産に追い込まれた。ベルラインがその最たる例である。
P&Oとステナラインは、コストを削減し海峡トンネルに対抗していくため、この機会に海峡ルートフェリー事業を統合することにした。