英国とヨーロッパ大陸を結ぶフェリーサービスは、タイン川以北にはない。いきおい、スコットランドからの荷をフェリーに載せるのに、ハンバー港まで(400キロ)、あるいはドーバー港まで(800キロ)の道程を道路で運ぶことになる。そうして、道路輸送の需要を増やしているわけである(*7)。この点、全国津々浦々にフェリー網が発達している現在の日本の状況とは違う。スコットランドは、人口といい位置といい、北海道にやや似ている。ただ、スコットランドには食料品や飲料(たとえばウイスキー)の生産量がかなりあるのに加えて、ヨーロッパのパソコンの三分の一以上を生産する非常に強力な製造業部門がある。これらの製品のほとんどは現在、コンテナでなくトレーラーで出荷されており、最近の調査では「現在、スコットランドとヨーロッパ大陸間には、両者を直接結ぶフェリーサービスを十分支持していける貨物輸送量がある」という結論が出ている(*8)。
英国の国際フェリー輸送量は、輸出と輸入がほぼバランスのとれた状態のようである。双方向とも、品目は実に多岐にわたっているが、ヘッド付きトレーラー1台あたりの貨物の価値でいうと、輸入は平均して25%ほど輸出より低くなっている。一方日本の内航フェリーは英国と違い、行き・帰りの輸送量の不均衡に悩まされている。北海道市場では、荷を積載したトレーラーの約70%が移入で、本州をはじめ他の地域に運ばれる南行きのトレーラーは30%しかない。そういう訳で、多くのトレーラーが空のまま割引運賃で南に運ばれるか、あるいは北海道中の港で荷待ちする空トレーラーの列ができるということになる。輸送品目も方向によって異なる。北行きは主に雑貨で、衣料品、電化製品、食料品、建材など。南行きは主に農産物や海産物、紙製品で、その多くは季節によって出荷量に大きな波がある。九州や四国でもだいたい同じような傾向があり、あらゆる製品が移入される一方、移出はもっぱら乳製品、魚介、農産品である。推定では、九州発フェリーに積み込まれるうちの20%から30%は冷凍トレーラーで、毎年8月が輸送のピークだという。ちなみに、英国の国際フェリーでは12メートルとそれより長い13.6メートルのトレイラー(多くは幌タイプ)が標準なのに対し、日本の内航フェリー市場では12メートルトレーラーが圧倒的である。
4. 船舶
1997年、日本沿岸の長距離ルートでは推定66隻のフェリーが運航していた。うち62隻(94%)は旅客宿泊施設のあるカーフェリーで、残りの4隻が純粋なRoRo船であった(表7参照)。輸送キャパシティでいうと、カーフェリーのシェアが圧倒的に高い。貨物はトレーラー約7728台分で全体の94%を占め、旅客は4万5553人で事実上100%のシェアである。カーフェリーが多く用いられている主な理由は、RoRo船には船腹調整制度があること。業界全体でキャパシティ過剰にならないように、RoRo船を新たに建造する際には古いRoRo船を廃棄しなければならないという規制である。
RoRo船が貨物船とみなされるのに対し、カーフェリーは旅客と彼らの自動車を載せるのが主目的というのが運輸省の考え方である。とはいえ、RoRo船(およびコンテナ船)も1999年4月までにはこの規制の対象からはずされる予定になっている。「カーフェリーと会社の多くがその収入の70%から80%を貨物から得ている現在、カーフェリーの主要マーケットは旅客ではなく貨物だ」との実状認識からである。
<表7>
長距離フェリービジネスが発展したのは1970年代で、以来多くの第一世代船舶がより遠くより大きな船にとって代わられてきた。今日長距離ルートを運航する典型的カーフェリーは、それぞれ12メートルトレーラーを100台と、300人から1000人の旅客とその車を載せることができ、その航行速度は最も速いもので29ノットである。日本の長距離フェリーはほぼすべて、航行速度21ノットから29ノットで、最近新造された船のほとんどは25ノット以上出すことができる。長距離フェリーが高速化するということは、東京一北海道間のトラック輸送に、近距離の津軽海峡横断フェリーを利用するメリットが少なくなるということで、そうなるとますます、ヘッドレストランクをフェリーで運ぶほうが効率がいいということになる(*9)。高速化が長距離ルートの航行時間短縮を可能にしたのである。たとえば新日本海フェリーは、小樽一敦賀ルートに27ノットの船を2隻(石川島播磨重工業製)導入し、それまで29時間かかっていた航行時間を21時間に短縮した。一航海と港での積み降ろしを24時間以内にできるようになったおかげで、同社は毎日運航のスケジュールを3隻でなく2隻でこなせるようになったのである。他社もこれに習い、たとえばマリンエキスプレスは川崎一宮崎間に、九越フェリーは博多一直江津間に高速フェリーを導入した。両社とも、三菱重工業製の時速25ノットの船である。
一方英国では、1997年に対ヨーロッパ貿易の主要フェリールートで運航していたのは、推定120隻。うち52隻はカーフェリーで、68隻がRoRo船またはRoPax船(*10)であった(表8参照)。52隻のカーフェリーのうち、39隻は従来型の船で残りの13隻が高速船である。高速船の三分の二はイギリス海峡ルートで運航しており、残りのほとんどはアイリッシュ海。北海で運航しているのは1隻だけである。英国フェリーのキャパシティ合計は、旅客ほぼ8万人。船舶タイプによる内訳は、従来型カーフェリーが77%、高速船が13.5%、RoPax船が9.5%である。ただ、カーフェリーが貨物市場で圧倒的シェアをもっている日本と違って、英国では貨物輸送キャパシティの多く(71%)がRoRo船およびRoPax船による(合計キャパシティはトレーラー8206台)。また、ルートで見ると、RoRo船およびフェリーのキャパシティは、トレーラーについてはほぼ半分が長距離の北海ルートに、旅客は61%が短距離のイギリス海峡ルートにある。
<表8>