英国政府には港湾戦略はなく、港湾施設のことは基本的に各港湾に任せられている[16]。これはもちろん、他の諸国のスタンスとは全く異なる。他の国々では、港湾ネットワークは経済全体、そして国や地域の社会資本の不可欠な一部分で、もっと戦略的なアプローチが必要だと考えられている。
ヨーロッパ委員会は現在、海港に対する公的補助金とコスト回収の問題全体を検討中である。港湾の経費は、全部は無理にしても、大部分は使用料でまかなうべきだという意見を支持する人も(委員会内には)いるようである[17]。しかし、港湾のインフラ投資は経済性のない場合もかなりあるという事実を、この意見は無視している。実際、世界中どこを見ても、何らかの公的補助なしに造られる民有港はほとんどない。その理由は、使用料だけで全コストを回収するのはまず不可能だから。加えて、港湾投資は非常に長期の投資だということもある[18]。(公共の超低利ローンの恩恵を受けたにもかかわらず、)派手に破綻した民間資本の海港の最近の典型例は、実は英国にある。つまり、テムズポートである。グレイン諸島にあるこの新しいコンテナ港は、開港5年にして、建設実費の3分の1にも満たない価格で、銀行家が売りに出した[19]。
諸外国では、港湾インフラへの資本投資については、(それらの国々では)そのような港湾投資が一般的にもたらす幅広い経済的・社会的波及効果と恩恵が認識されている。その恩恵は、投資効果の査定の際に民間会社は計算に入れられないが、公共部門なら入れられるものである。したがって、港湾投資は専ら民間セクターの問題という色合いが濃い英国の現状を考えると、将来の海港ネットワークに対して必要なだけの、あるいは(競合)諸外国で行われるような資本投資増額は行われなくなるのではないか。そうなれば、ゆくゆく英国の海港ネットワークは質や効率性において競合各国より劣るようになる。故に、港湾の所有権と投資の見直しが今必要なのである。
6. 結論
フェリー産業に関しては、研究者らはあまり関心を寄せていないようである。研究におけるこのギャップは修正せねばならない。港湾の船舶の出入りや取り扱う貨物の価値においてフェリー産業が他の輸送部門を凌いでいる英国においては、特にその必要がある。英国のフェリー産業が、雇用面でも他の輸送部門より大きな影響力をもつ可能性は大いにある。この点はもつと研究する価値があろう。なにも、定期船輸送やタンカー輸送、バラ積み輸送の研究価値が低いというのではない。ただ、ここ20、30年のフェリー運輸量の激増とそれに伴うフェリー産業の成長ぶりを考えると、輸送業界が変わりつつあるのは確かである。そして、その変化を定期的に調査していかなくてはならないと思うのである。