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の関与を示す報告とがある5)。しかし、水晶体が加齢により特に短波長光に対する透過率が低下することから、青錐体系反応は水晶体の影響を受けやすい。そこで我々は、水晶体の影響を除外して、青錐体系反応の加齢変化について検討するため、眼内レンズ挿入眼における中心視野内の感度分布についても検討したものである。

その結果、有水晶体眼において年代が増すに従い青錐体系反応の感度が低下していた。眼内レンズ挿入眼においても同様の傾向が認められた。以上より加齢に伴い明らかに青錐体系反応が低下することが確認された。したがって、加齢に伴う青黄軸の混同の要因としては、青錐体系反応の加齢に伴う低下が関与していることが確認された。

2. 視力の加齢変化

視力は、加齢とともに低下することが多くの研究者により指摘されている。しかし、対象に眼疾患を有するものが含まれていたり、眼鏡によって矯正された視力ではなく裸眼視力のものなど、検査対象に問題を有しているものが多い。市川6)は、眼疾患のない被検者において、視力は45歳付近を境に75歳までほぼ直線的に低下し、75歳を過ぎると視力低下はさらに加速することを報告している。しかし、80歳でも10%は、視力1.0以上であったという。

今回、我々は水晶体の加齢の影響を除外して、網膜からの視覚伝達路の加齢が視力に及ぼす影響について検討するため、白内障手術において眼内レンズ挿入術を施行した症例の視力について検討したものである。

その結果、水晶体の影響を除外しても、加齢とともに視力が低下することが示された。また、74歳までの群で最良矯正視力が1.0以上であるものの、年齢が増すに従い標準偏差が大きくなり、ばらつきが大きい結果となった。しかし、高齢者群の視力は従来の報告より良好であり、最良矯正視力が1.0以上を占める割合は74歳までの群で90%以上、80歳以上においても約50%以上を占めていた。ちなみに、戸張7)の報告によると、視力1.0以上を占める割合は60〜69歳が33.2%、70〜79歳が16.2%、80〜89歳が5.4%で

 

 

 

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