日本財団 図書館


破裂音、摩擦音においては正答率が低かった。日本語にない音素で明瞭度が低いのは当然として、鼻音や無声手書では有声子音と比べ明瞭度が低下する傾向が見られた。

山岸らは、発音された語音の音節聴取特性を定量的に把握する目的で、損夫情報量を用いた解析を行い、その有用性について先に報告した(山岸他、1994、1995)。そこでは、67式語表を用いた場合の損失情報量と明瞭度の関係から、明瞭度80%では1ビットで二者択一、明瞭度50%では2ビットで四者択一の曖昧さであることを明らかにした。本研究ではこの情報損失量の理論を応用し、正常聴力の日本人の英語語音聴取における音素ごとの損失情報量を算出した。子音の異聴を情報損失量で見ると、最も受聴明瞭度の低かった/p/が0.02ビットであったのに対し、/n/は0.09ビット、何は0.05ビットであった。損失情報量による比較では、/n/が受聴の際に最も発音音素を推測しにくく、/m/と比べて明瞭度はほぼ等しいものの、音素を正しく定位するのに約2倍の選択肢からの弁別が必要であると考えられた。しかし、S/N比の高い条件下での測定であり、算出された損失情報量は非 ‘常に小さかった。このため、本研究で得られた損失情報量のみで個々の子音の聴取特性についての比較を行い、結論を導くことは難しいと思われる。損失情報量を用いた評価については、明瞭度がさらに低下すると予測される騒音環境下において、再度検討を行う必要があると考えられた。

言語学の分野では、母国語が英語でない外国人の英語の聞き取りは、聴力障害を持つアメリカ人よりさらに劣り、騒音環境下ではその明瞭度が著しく低下すると言われている。日本語と英語の音声構造の違いを考えた場合、日本語は子音と母音の組合せというかな文字が1つの素材となっている。このため日本語の音節は必ず母音を伴い、子音のみの音節や子音が連続するという音節は存在しない。一方英語の語音の場合、かな文字のような音節構造は存在せず、子音や母音という音素の複雑な組み合わせにより語音が構成される。このため、子音が連続したり母音を伴わず子音で終了するような語音の構成が英語には存在する。また、語音を構成する音素の

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION