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聴のうち、発音されていない音素が音節を構成する音素の前後に加わる例も見られた(表5)。しかし、これらの異聴の傾向と頻度には、個人差が大きく見られた。

異聴された音素の損失情報量は、/v/、/k/、/s/、/z/では0.01ビット、/p/は0.02ビット、/l/、/ /は0.03ビット、/t/は0.04ビット、/m/は0.05ビット、/n/は0.09ビットであった。

 

4. 考察

 

語音聴取域値測定用の諸表は、やさしい語であり、しかも分かり易さの点で均一であることが必要であるとされている。この条件を満たす諸表として、日本では1桁数字リスト等の有意語音が用いられる。一方アメリカでは、有意2音節の単語で、両音節がほぼ同じstressをもつspondee listが用いられている。本研究では、spondee listの一つであるC.I.D.Auditory TestW-1 listを用いて日本人における英語の語音聴取域値を測定した。表6に日本語と英語の検査語表の違いについて比較した。C.I.D.Auditory Test W-1 listの一部は、日本人にとってやや馴染みの薄い語音もあり、やさしさや分かり易さを均一にする目的で、検査に先立ち順不同に印字した検査用のhstを被験者に提示し、発音を確認した上で検査を行った。しかし、正常聴力の日本人における英語の語音聴取域値は、英語学習経験の多寡にかかわらず、平均純音聴力レベルや日本語の語音聴取域値と比べて有意に高かった。

また日本語の67-S諸表では、全被験者で100%の語音弁別能が得られたのに対し、英語のC.I.D.Auditory Test W-22 listでは、快適聴取レベルであったにもかかわらず、平均の語音弁別能で100%は得られなかった。正常聴力の日本人が日本語の子音を聴取する場合においても、S/N比の低下により特定の子音における明瞭度が低下することが分かっている。本研究ではS/N比の高い条件下で英語の語音の聴取を行ったが、子音のうち鼻音や

 

 

 

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