数も英語は日本語に比べて多い。このような日本語と英語の音素数や、音素の組み合わせの違いによる聴取の難しさが大きく影響した結果、語音弁別能における個人差が生じると考えられた。
本研究では防音室でS/N比の高い条件下で語音聴力の測定を行い、英語の語音聴取域値の上昇、語音弁別能の低下を認めた。例えば航空機の室内は、防音対策が施されているとはいえ騒音環境であるが、交信の公用語として英語が使用されている。このような騒音環境下で英語を用いる場合には、正常聴力者においてもS/N比の低下による語音聴取能低下の傾向はさらに大きくなり、各音素ごとの聴取の特性やその個人差もより顕著になるものと思われる。引き続き、騒音環境下における英語の語音聴力検査を行っており、騒音負荷時おける日本人の英語音声聴取特性について、さらに定量的な評価を行い検討を進めていきたい。
5. まとめ
1. 正常聴力の日本人に対し、英語の語音聴力検査を行った。
2. 日本語の語音聴取域値は平均純音聴力レベルとほぼ等しい値を示した。一方英語の語音聴取域値は、日本語のそれと比べ有意に高い値を示した。
3. 日本語の語音弁別検査では、全症例で100%の語音弁別能が得られたが、英語の場合平均で100%の弁別能は得られず、個人によるばらつきが大きく見られた。
4. 英語の異聴の傾向は子音において顕著であり、鼻音や破裂音などの音素では明瞭度が低下する傾向が見られた。
5. 英語の語音弁別能や異聴の傾向については、英語経験による個人差が大きく見られ、環境騒音下では、このような傾向はより顕著になるものと予測された。
6. 参考文献
山岸豪敏、牧嶋和見、吉田雅文、大鶴 徹:感音難聴者の音声聴取特性(実測推移行列および損失情報量による解析)Audlology Japan 37,45-50,1994
山岸豪微、牧嶋和見、大鶴 徹:感音難聴者の音声聴取特性(第2編 損失情報量による音節聴取の解析)Audiobgy Japan 38,263-269,1995
吉田雅文,相良哲哉,長野美貴,是永克実,牧嶋和見:騒音負荷時の語音明瞭度―第1報:正常聴力者における検討―.日耳鼻 95:195-200,1992