(3) 解析方法
標準純音聴力検査の結果から算出された平均純音聴力レベルと、日本語及び英語の語音聴取域値を比較し、統計学的解析を行った?@英語の語音弁別検査で用いる講書を、音素ごとに分けて受聴マトリクスを作成し、発音音素の受聴明瞭度と損失情報量を算出した。受聴明瞭度は発音音素に対して正しく受聴された音素の割合が百分率で表される。一方損失情報量の値は音素ごとにビットで表され、1ビットは二者択一、2ビットは四者択一の情報の曖昧さを示し、2ビットの音素では1ビットの音素に比べ、2倍の選択肢からの弁別が必要であるとされる(山岸豪敏ら、1994、1995)。
3. 結果
全症例のうち英語の語音弁別能が比較的高かったものを症例1(図1、図2)、英語の語音弁別能が比較的低かったものを症例2(図3、図4)としてそれぞれのスピーチオージオグラムを示した。全体としてみると、日本語の語音聴取域値は平均純音聴力レベルとほぼ等しい値であった(図5)。
一方、C.I.D.Auditory Test W-1 hstを用いて得られた英語の語音聴取域値は、英語学習経験の多寡にかかわらず、平均純音聴力レベルや67-S語表による日本語の語音聴取域値よりも高く、有意の差を示した(図6、図7)。
日本語と英語の語音弁別能の比較を行った結果、日本語の語音弁別検査では、30〜50dBの聴取レベルでl00%の語音弁別能が得られた。一方、英語の語音弁別検査では、充分な聴取レベル(快適聴取レベル)であるにも関わらず、20耳の平均の語音弁別能で100%は得られず、弁別能の測定値には個人差が大きく認められた。
英語における異聴の傾向は子音で顕著に見られた。したがって、語音弁別検査で用いた語音を音素ごとに分けて、受聴マトリクスを作製し、子音についての受聴の正答率と誤答率を検討した。子音の音素のうち、主に鼻音や破裂音などでは正答率が低かった。正答率が低かった子音の受聴マトリクスを図8に、さらにこれらの主な果聴例について表4に示した。また異