資料-A 運輸多目的衛星用衛星航法補強システム(MSAS)の整備計画
平成9年8月
航空局管制保安部無線課
1. GNSSの概念
ICAOの航空会議(1991年9月)において、将来の航法システムに関する特別委員会(FANS特別委員会)の衛星を利用した新CNS(通信/航法/監視)の構想が承認されたことに伴って、米国のGPS(Global Positioning System)及びロシア共和国のGLONASS(Global Navigation Satellite System)の周回衛星を使用する全地球的航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の民間航空による利用が本格化することになった。
ICAOの概念では、GNSSへの移行の必要条件として、航法データの完全性、精度等が、常に地上において監視されるとともに、航空機に対し、航法衛星システムの状況及び航空機の飛行フェーズ毎に定められた最低運用要求基準を満足するための補強データを伝達することが不可欠であるとしている。
GNSS補強システムはサービスの対象エリアにより、次のように分類される。
(1) 衛星型補強システム(SBAS:Satellite-Based Augmentation System)
エンルート、ターミナルからの非精密進入(或いは精密進入まで)までの広範囲のエリアの航空機の運航を対象とした補強システムであり、MSAS(MTSAT Satellite Based Augmentation System)は、この衛星型補強システムに分類される。
(2) 地上型補強システム(Ground-Based Augmentation System)
空港などの、狭いエリアにおいて、航空機の精密進入等を対象とした補強システムである。
これらのGNSS補強システムを導入することにより、従来のように地上に設置してきた航空保安無線施設の設置上の制約にとらわれず、フレキシブルな航空路、飛行ルート等の形成が可能となるとともに、基本的にはあらゆる方位からの進入着陸が可能となり、飛行ルートの短縮等により経済性、利便性が向上するとともに、騒音防止のためのルート設定にも柔軟に対応できる。
2. MSASのシステム機能
MSAS(MTSAT Satellite Based Augmentation System)は、GPS(当面)のための静止衛星型衛星航法補強システムであり、日本の飛行情報区及びその隣接エリアにおいて、エンルート、ターミナル、非精密進入(精密進入)の各飛行フェーズにおける単独利用が可能な航法システム(Sole Means Navigation System)の要件に適合することを目標としている。
なお本システムは以下の事項を補強する機能を有している。
? 完全性
? 精度
? 運用の継続性
? 有効性
以上の4つの項目について補強するものであり、具体的には下記のデータ信号を、GPS L1周波数(1575.42MHz)において運輸多目的衛星(MTSAT)を経由して航空機に放送することにより達成するものである。