これによれば測位誤差は基地局、ユーザ間の距離(基線)の長さが増すと増加し、基線長1000kmでは最悪36mもの誤差を生じる可能性があることがわかる。
このような不都合が生じる原因は、これらのDGPSのシステムが主局、従局で誤差の要因、その大きさがほぼ同等であるという条件の下での動作を考えたものであるためで、表2.4に示すように多くの誤差の要因は基線長が増加することにより、主局、従局間で相関が減少し、測位結果の精度を維持することが困難となるからである。
航空機等、広いサービスエリアを必要とするDGPSはこの基線長によって精度が劣化するという欠点を取り除く必要がある。
この欠点を除くため、MSASにおいては誤差要因を
1) 主にSA(Selective Availability)によるもので比較的高速で変動するもの
2) 電離層によるもの
3) 衛星軌道及びクロックによるもので時間的な変動は比較的小さいもの
に分離し、従来の単独の局(ディファレンシャル主局)のみによる誤差の推定から、広範囲に配置した複数の局から各要素毎にその誤差量を推定し、その要素毎の値をユーザに放送、ユーザは自身の位置等から、各々の要因が擬似距離観測量に与える影響を計算し、補正量を求め、自身の観測量の誤差成分の補正を行い測位演算に使用する。補正データの種類と内容を表2.5に示す。