4.1.2 放送型データリンクシステム
前項で述べたように現在の航空用データリンクシステムの各種トライアルは将来のATN化への過程と捕らえることができる。本節では、将来のデータリンクシステムでキーテクノロジーとなる放送型データリンクの特徴とそれにより実現されるアプリケーション、さらに放送型データリンクにおけるGPSの果たす役割について述べる。
(1)特徴
データや音声情報を伝送する方法は下記のように分類することができる。
・two-way,addressed:アドレス指定型
・one-way,broadcast:放送型
アドレス指定型は情報を伝送する際に送信先(アドレス)を指定する方法で、音声伝送の例としては航空機電話や管制通信、データ伝送の例としてはACARSがある。一方、放送型は情報を伝送する際に送信先を指定しない方法で、音声伝送の例としてはATIS放送がある。
前節で示したATNはアドレス指定型のデータリンク機能を利用して様々な航空用アプリケーションを実現することが可能となる。しかし一方で放送型データリンク機能を利用することで、アドレス指定型よりもはるかに効率的に、あるいは放送型で初めて実現できる航空用アプリケーションが考えられる。放送型とアドレス指定型のデータ伝送の特徴を以下に示す。
(a) アドレス指定型の特徴
アドレス指定型では相手を指定して情報を送信するため、送信先毎に送信情報を設定することが可能となる。(図4-2参照)従ってそのアドレス以外には価値が無い(あるいは送信すべきでない)情報を伝送するのに適しており、具体的には以下の情報が考えられる。
・航空管制のための情報
・運航管理のための情報(飛行経路や出発・到着時刻等)
(b)放送型の特徴
放送型では多数の相手を同時に、かつ効率的に情報を送信することが可能となる。(図4-3参照)従って多くのユーザーに共通して価値のある情報や頻繁にアップデートが必要となる情報を伝送するのに適しており、具体的には以下の情報が考えられる。
・気象情報
・空港/航法援助施設などの航空情報
・トラフィック情報
・自機の位置情報
・GNSSの補強情報
・空域の特別な利用状況やチャート化されていない障害物等