3.2.4 ARNAV Systems社の地上支援システム開発への取り組み
(1)概要
ARNAV Systems社では、GeoNetと呼ばれるデータリンク用地上インフラを独自に整備し、小型機に対するデータリンクサービスの提供を行っている。GeoNetにおいて採用している機上システムならびに地上システムについてもARNAV社によって開発されている。これらの装置はアトランタオリンピックのHELI-STARプロジェクトにおいても採用されており、計110セットが納入されている。
(a) ARNAV Systems社構築システムの概要
GeoNetはARNAV Systems社によって構築されたデータリンク用ネットワークで、ネットワーク運用センターから航空機に対して気象情報、トラフィック情報等を提供するとともに、運航者-パイロット間での双方向メッセージサービスを行うことも可能である。ARNAV Systems社はGeoNetのサービスを享受するための機上装置である多機能表示器(MFD-5200)の製造も行っている。
MFD-5200では、ムービングマップ上にグラフィカルな気象画像およびトラフィック情報等の通信データを表示するとともに、エンジンモニタデータ等の機上のみで取り扱うデータの表示も可能である。
アトランタオリンピックのHELI-STARプロジェクトにおいては、さらに機能を付加した上でローカルなエリアでの運航支援トライアルを実施した。ARNAV Systems社はさらにFAAのFLIGHT2000計画において実施が予定されているHalaskaプロジェクトにも参入する意向を示している。
(b)調査対象
GeoNetに関する調査は、米国ワシントン州PuyallupのARNAV Systems社オフィスにおいて委員会調査団によるヒアリング形式で実施した。ヒアリング対象者は以下の通りである。
ARNAV Systems 社 社長MR.Frank Williams
副社長 Ms.Susan M. Hammer
(2)GeoNet上で利用可能なアプリケーション
(a)アップリンクアプリケーション
GeoNetにおいて地上システムから提供することが可能な情報は以下の通りである
・気象情報(放送型)
・フリーテキスト(アドレス指定)
提供する気象情報はレーダー画像およびMETARである。これらの気象情報はMFD-5200のディスプレイ上ではグラフィカルに表示される。レーダー画像は全米113のレーダーサイトの情報を集約する機関NEXRADから入手している。NEXRADの提供する画像データは15分間隔で更新されるlkmの解像度のメッシュデータであるが、このデータの解像度を8kmのメッシュに落として機上に提供している。近い将来、NEXRADの提供データの更新間隔は10分となる予定であり、データ更新レートが上がるが、GeoNet自体の能力としては5分毎の更新も可能なものとなっており、対応可能である。なお、気象画像を提供するベンダーはカボラス、WSIなど全米に4つ存在し、アトランタオリンピックのHELI-STARプロジェクトではその中のUNISYSを利用した。
METARについては、テキストデータだけでなく、カテゴリカル・メター(CAT/MET)社が北米全体(約100個所)について1個所2バイトの情報として配布している風向、シーリング、視程、露点温度の16ビットデータをアップリンクしている。機上では、1個所につき上下2つの箱をつなげたブロックで表わされている。ここでは上のブロックにシーリングの状態を、また下のブロックに視程の状態を色分けで示すようにしており、一見してその地点が着陸可能な気象状態かどうかを判断することができる。
機上での気象レーダー画像およびグラフィカルMETARの表示例を図3-12および図3-13に示す。