2.4 新たな地上支援システムの必要性
前節までに記述してきたように、小型機運航上での大きな問題となっている、運航効率、運航の安全性、通信のブラインドエリアに関する問題を解消するためには、GNSSの利用等、機上のアビオニクスの発展に依存するのみではなく、地上において小型機の現在位置を正確に把握し、適切な情報提供を行うことが可能となる新たな地上支援システムの構築が不可欠である。
ICAO(国際民間航空機関)では、将来の航空保安システムとしてCNS/ATMシステム(通信[C]、航法[N]、監視[S]、航空交通監視[ATM])が承認されているが、その中で重要な役割を担うのが人工衛星とデータリンク技術である。
人工衛星技術の導入により、航法の面では小型機はいかなる空域/気象状況下においても非常に安価な装置によって自機の位置を把握することが可能となる。また通信の面では電波のブラインドエリアの問題を解消し、小型機が飛行する全ての空域での交信が可能となる。
一方でデータリンクの導入により、従来の音声通信による情報提供、情報入手しか不可能であった空地の関係は大きく変化する。機上からはデータリンクによりパイロットの手を介することなく自動的に正確な位置情報やPIREPのデータが地上に送信され、運航者による運航管理や航空管制機関による運航監視の機能が大きく向上する。一方地上からは気象画像や他の航空機の位置情報などを機上に送信することによりパイロットに対する運航支援機能が充実する。
人工衛星・データリンク技術により小型機の安全性と運航効率の向上が可能となる一方で、今後ますます輻輳が予想される小型機運航の安全性を図るため、これに対応した機上装置および地上支援システムの整備を進める必要がある。
また、インフラが整備されたとしても実際にシステムの利用価値すなわち利用者にとっての恩恵が運航者の投資に見合うものであるためには、単にインフラ構築のみならずそれにより実現されるサービス(アプリケーション)のパフォーマンスの高さが求められる。小型機運航への地上支援システムを構築するにあたって現在求められているのは、次世代に向けたインフラ作りと、実現すべきアプリケーションの機能要件を正確に見積もることである。
人工衛星・データリンク技術の導入により、小型機運航に生じると思われる変化の例を
・運航管理を行う運航者
・運航監視を行う航空管制機関
・運航支援を受けるパイロット
の視点からまとめたものを表2-5に、また将来の小型機運航の概念図を図2-7に示す。