参考
小型機運航は、その多くがVFR(Visual Flight Rules:有視界飛行方式)により行われている。VFRとはIFR(Instrument Flight Rules:計器飛行方式)以外の飛行、すなわちパイロットが目視によって地上の障害物、地表、他の航空機などとの間に間隔(visual separation)を設定しながら航空機を操縦する飛行方式であり、それらとの衝突回避については常にパイロットが責任を負わねばならない。
1975年10月の航空法改正により、日本においてもヘリコプタによるIFRが法制化された。IFR制度の導入はヘリコプタの運航効率を大きく高めるものと期待されていたが、法制化後20年以上たった現在においてもヘリコプタによるIFRは1部の機関(官公庁)を除き定着していない。その要因としては
・気象状況に影響を受けやすいため、就航率が低い。
・騒音が固定翼に比較して大きいため、飛行空域が限られる。
・運航費が高い。
・山岳地域の飛行が多いため、電波覆域外となる。
・ ヘリコプタの特性を考慮した計器飛行方式、管制方式基準が設定されていない。
などハード面とソフト面の問題が存在する。
本研究の対象である地上支援システムは小型機運航の大半を占めるVFRの機体への支援を前提としているが、新しい航法・通信技術の導入により将来小型機運航におけるIFRの割合が大きくなる可能性がある。IFR機に対する地上支援システムのあり方も考えるうえで、ここではヘリコプタによる2地点間旅客輸送に成功している希有な例としてカナダのバンクーバーにおけるヘリジェット社の運航に実際に搭乗して調査した結果を報告する。調査メンバー等については3.1.2項を参照されたい。
(1)概要
・調査実施日:平成9年11月27日
・実施場所:カナダ、バンクーバー
・調査目的:実運航している機体に搭乗してコックピット内のマネジメントを見ることにより、今回調査し研究しようとしている小型機用地上支援システムのあり方について参考となる情報を得ること。
(2)ヘリジェット社の概要
1986年11月から、カナダの西海岸の南端にある商業都市バンクーバー市から海を隔てた直線距離約60NM南にある州政府機関が集まり政治の中心であるヴィクトリア市との間に、ヘリコプタによる2地点間旅客輸送を開始した。また、合わせてバンクーバー国際空港とヴィクトリア市との間にも2地点間路線を設定した。
また、平成9年から新たにヴィクトリア市とアメリカのシアトル(ボーイング・フィールド)を結ぶ国際線も開設した。これらの運航内容を以下に示す。