2.1.1.2 評価実施方法
本評価においては、それぞれ以下の方法によりデータの取得を行った。
(1)手順
日本航空の実運航便において、特定のシナリオに基づき機上運航乗務員と地上システム担当者間において、シナリオに基づいたCNS/ATMの模擬通信を実施した。航空機が洋上飛行の段階において、それぞれ指定されたサービスプロバイダーの航空地球局(GES1)にログオンした状態でAFNログオンを行い、以下シナリオに則ったCPDLCメッセージのやり取りを行った。また、地上側からはコネクションが確立できた段階でADSのリクエストを発行し、機上からのADSメッセージを取得した。
(2)評価対象
空地データ通信においては、当然UPLINKメッセージとDOWNLINKメッセージの2種類が存在するが、今回の評価対象としては以下の理由によりDOWNLINKメッセージのみとした。
・UPLINKメッセージが機上にて受信された場合に押下されるタイムスタンプは、キャプテンクロックに基づいたACARS MUによる時刻であるが、この時刻と地上の時刻の整合性を計る事が困難な事
・UPLINKメッセージを機上にてプリントアウトした場合に表示されるタイムスタンプの時刻は分の単位までしか表示されないため、上記の誤差に加えてさらに±30秒の誤差が生じる事
・UPLINKメッセージにおいては通常メッセージアシュアランスの機能により送達確認が容易に行える事
(3)伝送遅延時間の測定方法
DOWNLINKメッセージにおけるデータ伝送遅延時間については、以下の方法により算出した。
「機上で作成されたメッセージについては、機上のFMCによって付加されたタイムスタンプ2から、地上ホストシステムで受信した際にホストシステムのマシンタイムによって付加されたタイムスタンプまでの時間」
1GES:Ground Earth Station
2AFN:CPDLC・ADS各メッセージ中のタイムスタンプ算出方法については、付録Aを参照
(4) 機上及び地上のタイムスタンプと時刻補正について
機上におけるタイムスタンプは、AFN・CPDLC・ADSメッセージともにFMCによって作成され、作成された時点でGPSによるタイムスタンプが押下される。GPSタイムの信頼性については、平成8年度「CNS/ATMシステムに対応した機上装置の導入評価研究」報告書の「2-52」ぺージに以下の通り報告されている。
「機上のタイムスタンプはGPSのタイムスタンプを使用している。GPS時はセシウム原子時計であり、協定世界時(UTC)との差はうるう秒の挿入により現在11秒進んでいる。ただし、GPS衛星からその補正値も送信され、機上にてその時刻を補正する為、基本的にUTCとの差はない。」
地上システムにおけるタイムスタンプについては、日本航空のホストシステムによるタイムスタンプを使用した。これは、地上試験端末を構成しているPCのマシンタイムの信頼性が低い事によるものである。
日本航空ホストシステムのマシンタイム設定方法は、毎月1回のシステムメンテナンス作業時に、運用担当者がNTTの時報に合わせてマニュアルで設定している。このためデータの正確性と言う意味では、±1秒程度の誤差が想定される。また、作業員の操作ミスによっては、それ以上の誤差が生じる可能性がある。そこで、各試験開始前に、時報とホストシステムのマシンタイムのずれを計測し、これによる補正を加えて、UTCにそろえる事とした。この場合でも時報との誤差測定ではマニュアルに頼らざるを得なかったため、最終的な時刻としては±2秒根度の誤差がある。
これらにより今回の評価におけるデータ伝送遅延時間については、最大±2秒の誤差が生じることが前提となっている。