2.5 航空機内で使用する携帯用電子機器のEMI評価方法に係る考察
航空機内で使用する携帯用電子機器のEMI評価においては、?その携帯用電子機器からどの程度のレベルの電波が放射されているか、?そのレベルの電波が客室内で放射されたら航空機が影響を受ける可能性はあるのか、という二点を考えなければならない。
?については、平成8年度の研究においてRTCA/DO-160C、Section 21に示される手順および基準を参考にして測定を行った。航空機に搭載されているほとんど全ての電子機器はこの基準によって測定されており、同じ基準の中で議論できるという点から、携帯用電子機器からの放射電磁界を測定する際もRTCA/DO-160Cの手順および基準を参考として測定すべきと考える。但し、RTCA/DO-160Cは昨年7月に改定されRTCA/DO-160Dとなっているので、今後の評価にはRTCA/DO-160Dに示されている手順・基準を参考とすべきである。またRTCA/DO-233では携帯用電子機器を導電性のないテーブルの上に置き、且つその高さを80?としている(RTCA/DO-160ではグランドプレーンの上に置き、高さはアンテナとの相対位置で規定されている)。これは航空機の中で乗客が使用している状態をより模擬するためであり、今後の測定にはこのRTCA/DO-233の設定を用いることを推奨する。
?については前述の項目2.1.6「考察」でも述べたように、機器や配線に直接干渉する可能性はほとんど無いと判断できる。従って、アンテナあるいはそれに接続されている高周波ケープルヘの干渉の可能性と各受信機の感度特性を評価すれば十分と考える。今年度行った経路損失の測定は、この干渉レベルを確率としてとらえたものであり、各受信機の感度特性と併せて評価することにより、?の評価方法として使用し得ると考える。
以上より、航空機内で使用する携帯用電子機器のEMI評価方法としてRTCA/DO-233に示される以下の方法は妥当なものであると考える。
・ 携帯用電子機器からの放射電磁界の測定にはRTCA/DO-160D、Section 21の手順・基準を用いる。但し、測定に際しては非導電性のテーブルの上に被測定機器を設置し、テーブルの床からの高さは80?とする。
・ 機体への影響についてはRTCA/DO-233に示される方法で経路損失を測定し、機体システムとしての受信機の感度特性と併せて評価する。
の二点について測定及び評価を行う。
即ち、
(携帯用電子機器からの電波放射レベル)-(経路損失)≧(受信機感度レベル)
ならばEMIの可能性があると考えるべきであるし、
(携帯用電子機器からの電波放射レベル)-(経路損失)<(受信機感度レベル)
ならばEMIの可能性は少ないと考えられる。