(?) 荒天時の操船(ヨット)
1. はじめに
ヨットは従来ロールオーバーして浸水しても予備浮力があり傾斜角180°付近で転覆モーメントが0になるとその姿勢のまま周囲のちょっとした風や波の外力を拾って浮心が変位し再び復原偶力を得て正立するのがヨットのヨットたる所以であったが近頃のヨットのデザインアイディアはスピード優先の傾向があるためかLがより長い,帆の面積がより大きい,船体がより軽い船が建造される傾向がある。
スピードの追跡はどうしても安全性の犠牲を伴うのでスキッパーは自艇の安全運航について十分な耐航認識を以て行動する必要がある。
20ft前後のヨットは外洋で荒天に遭遇すると反対にかえされて波に乗りきれないので帰港は早目に決断する。
小型ヨットは風力5.外洋ヨットは風力7までは問題無く走れなければならないとか色々と言われているが荒天の基準をどこにとるかは艇の性能と自分の帆走技倆との兼ね合いの問題であるから環境への適応はセーラーとしての自己判断で決定されるべきである。
2. ヨットマンの荒天操船
沿岸小型ヨットは荒天を予知したら早目に避難するのが最善で,またそうしなければならない。
外洋大型クルーザーは荒天になっても逃げ場がないから時化に対する対応は命がけとなる。
?ヨットの荒天時のアクシデント
イ. 転覆 ロ. マストの折損 ハ. バウ沈 ニ. 落水 ホ. 船体損傷(キール)へ.プロペラヘの索類の絡み 卜. セールの損傷 チ. 乗揚 リ. ラダー故障 ヌ. 浸水
?セーリング
荒天中のランニングは一番危険である。裏風を受けてワイルドジャィブしたり,小型艇はバウ沈したりする。
ランニング中はセールを真横に張るからセールのC.E(風圧中心)が艇から一番離れることになりウェザーヘルムとなるのでリーザイドヘ当舵をとっているところにいきなりジャブされると当舵方向とウェザーヘルムが一致してはげしく切り上がりブームの急回転で転覆したりする。
チラーは絶対手から離さないことが必要。また前後方向で言えばC.Eは艇の前方に来るので艇首が水中に入り込んでしまう。時には縦方向にオーバーロールしてしまうこともある。
小型艇は艇の後部へ移って操船し,風上に切上ってシートをはなしできるだけバウ沈しないようにする。
荒天中上りで帆走する場合クローズホールドで走ると小型艇はヒールやリーウエイが大きくなるからできるだけクローズドリーチで走り傾斜による波の浸入を防ぐ。
追及でブローチングの恐れがある場合は艇尾からロープをバイトにとったり,シーアンカー等を曳いて走る。
ウエアリングも回頭の過程でジャイビングを伴うので,タッキングで間切りながら荒天を走るのが安全。
いずれにしても強風下のランニングは保針しにくく,ローリングも大きく先に述べたバウ沈のリスクもあるので細心の注意をしてもらいたい。