?リーフ
荒天中は縮帆して走るのが常識である。外洋艇は必ずストームセールを搭載すべきでストームセールにはストームジブとトライスル(メンセール専用)がある。
荒天を予知したら早目のリーフが肝要で,強風になってからの縮帆は困難を伴う。(縮帆の時期は一概に言えないが小型艇では風速7m位になったとき,外洋艇ではローリングがはげしくなったリプローチングしそうになり舵ききが悪くなった時が縮帆の目安であろう。)
普通時化てくる前に風に立てジブからリーフしていく。詰開(上り)ではあまりリーフしすぎるとかえって操船しにくくなる。
縮帆には現在色々なギヤーが開発されている。昔からマストとブームとセールは一体だと言われていてリーフすればぎこちなくなるが,荒天時,簡単にリーフできるのは作業の安全性の上からも有難いことである。
メンスルの縮帆にゾフィーリーフ.ジブの縮帆にファーリングジブ.ブームを回転しメンスルを廻き取るローラーリーフ等がある。
強風時にはリーフかストームセールに張り替えるかする。
ファーリングシステムは現在セーラーの荒天時の武器である。
?ヨットの機走等
荒天中セールを下しベアポールの状態で機走するのはヨットの水線下船体構造から考えてもあまり感心しない。ヨットは帆走してこそヨットであるからその特性を生かしてストームセールで走るべきである。
また,荒天中のディスマスト(折損)はステイやシュラウド.スプレッダーの切断破損に原因することが多いから,これ等高所の索類・構造のメンテは日頃から充分しておかなければならない。
?heave toとlying to
荒天のため,もはや続航不可能となった場合,(入港天明待ち等のときにheave toすることもある。)等はこの荒天操船を行う。
heave to
ジブを降ろしメンスルは深くリーフするか,トライスルを使う。メンを引き込みチラーを風下に固定する。太洋の中なら問題無いが陸岸があるときは充分距離を保つこと。
lying to
ヨットの復原力消失角は普通,80°〜130°と言われており,ヨットは転覆しても又起き上がるものだと思いこんでいる人もいる。
この理解はある程度正しく又そうあるべきである。そのためにはヨットの予備浮力の確保が絶対条件である。ボイドへの浮力材の充填,キャビンルーフに固定式自動膨張ラフトの取付けを+面とすれば180°転覆した後のマストの長さ(抵抗)キール.バラストの軽さは-面である。
ヨットのスタビリティー(復原力)が抜群のところから荒天時ベアポールにして後は何もせず風浪をビームに受けて,流されるにまかせ時化の静まるのを待つのもlingの一法である。
別法はシーアンカーの投入であるがヨットの場合,船首からシーアンカーを投下しても風に船首が立たない。
浸水部にディープキール(バラストキール.ヒィンキールetc)をもつためである。投下するときは必ず船尾から投下する。
ヨットの海難事故が絶えない。これらの悲しい犠牲がこれからのヨットの設計に荒天操船の指針に尊い教訓として生かされることを祈らずにはいられない。
―参考図書―
旧制高等商船(現東京商船大)航海学教課書“行船法”
吉野令二著 ヨットのA.B.C
雑誌 C.W