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(?) 荒天時の操船(動力船)

1. 荒天中自分の針路速力を保持しがたい時,船首を風浪に立てるか或は,風浪を船尾方向から受けるかはその時の状況によるが風浪を正横方向から受けるのは危険である。

2. 荒天中の変針は急速な転舵を避ける。波の状況を見て徐々に行う。

大角度変針は極力避ける。

3. 船体動揺の固有週期と波の視週期が一致すると動揺が著しく増大するから適宜変針して避ける。

4. 荒天中は針距速力を調正してこれらに当らねばならないが,舵効を維持する最大限の速力は常に必要である。

以上は古くから我々船乗に言い伝えられて来た荒天操船の鉄則である。

これを小型プレジャーボートの特性を配慮しながら列記して見ると

?荒天に会うのが不幸にして避けられないと判断したら早目に開口郡の閉鎖,船内移動物のセキュアリング(固縛)を直ちに行う。上甲板上には強力なジャックステイを張る。ライフライン外荒天ギヤーの装着,小型船は復原力がどうのこうのと言う前に先ず,浸水防止が先決であることを肝に銘じてほしい。

?小型船は船首部の甲板荷重を軽くすることを常に考えておかねばならない。続航が困難ならば船首から20°〜30°に風浪を受け舵効を失わぬ程度に減速しHeave toする。これを“船首ささえ”と呼んでいる。

また,続航が可能であればプレジャーボートは特に船首を波に突込みやすいのでスラミングがはげしくならぬ様な船尾トリムにしてスロットルレバーを調整しながら砕波が低くなったところを前進する。

?常に波の上り斜面に張り付くようにスロットルを調正する。排水量が20T 位の小型船は船首に青波が打ち込むのを極力避けなければならない。バラス卜調整やトリムタブを上げて船尾トリムで航走する。

波の下り斜面ではスロットルを引いてスピードを落し気味にして走る。

船首がフラつきやすいので操舵には特に注意が必要。

?横波を受けて走るとローリングが大きくなり勝ちである。横揺れがしのげるような状態は別としてビームエンドになって海水がデッキやコクピットに流入すると復原力を低下させて非常に危険な状態に陥る。

このような場合は直ちに変針してローリングを緩和する針路を探さなければならない。

横波中の当て舵は船首を風上に切上げてしまう傾向がある。

?スカッディング(追波)で航走する場合,波速より船速の方が早ければまだしも追波がそんな状態ばかりとは勿論限らないから舵まわり,推進器に対する波の衝撃,波の船内侵入には十分注意が肝要で,こんな状態は復原力,予備浮力,保針等どれ一つをとっても小型船には致命的である。

ちなみに船が波頂にある時は,スタビリティーは減少し波長と船のLが同じ位のとき1番悪くなる。

船速と波速が等しいと船が波頂にいる度合が多くなる。また追波航走の場合,最もこわいブローチングには細心の注意が欠かせない。

追波の下斜面で舵がきかなくなり船が横すべりして大傾斜を起こすブローチングを防ぐには前トリムを避け重心はなるべく下げて船尾の抵抗を増やすためロープやシーアンカーを流す。下りの舵は早目にとる。

斜追波は避けて真後方より波を受ける,波の上り斜面に長く張り付くスロットル操作,等の一連の動作が必要となる。

波速>船速.波長=1.5Lの時が最も危険である。リードがLの5%以上,舵の面積が少さい船,船首ボトムがV型の船は要注意。

註:リードは船の重心と浸水側面積の中心までの距離で中心が重心より前にあるときの長さ。

点でしっかりした測位をしておくこと。1時間当たりの燃料消費量は速力の3乗に比例し,1マイル当り消費量は速力の2乗に比例することを考え残油と残航程,速力,周囲環境の変化に判断を誤ってはならない。

荒天中のショートバンカーは1巻の終わりである。

 

 

 

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