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今まで調べた潮の流れや,後に説明する避険線等に気を配り,前方の重視線がとれそうな二物標か,単一の顕著な物標をあらかじめ選んでをき,その方位線上を航走して左右の偏位が直ぐ解る様な針路を計画する。夜間の出入港は避けること。

離岸距離

P・Bと一口に言っても色々あって,条件次第では100浬以遠の航行が可能な船もあれば,海岸から5浬以内の水域しか航海出来ない3・4級免許クラスの船もある。沿海や近海区域のP・Bでも構造や性能等から普通航行区域に限定が加えられている。この事は,計画を立てる段階で常に頭の中に入れておかねばならない。P・Bは,眼高が低いので離岸距離は1〜2浬が標準である。離岸距離を決定する場合,注意しておかねばならないのは,P・Bはリーウエイ(風圧差)が大きいと言う事で,之は浸水部分の側面積が非浸水部分の側面積に較べて少ない為である。その他視界の良否・1海岸付近に発生する異常波・向岸流・定置網や自然の障害物,漁船の存在・エンジントラブルを起したときに,海岸に引寄せられない様な充分な距離等を考えて,最適な離岸距離を決定する。

変針ポイントの選定

桟橋で繋船ロープをレツコしたり,抜錨した時間を出帆時間とする。エンジンも微速や半速で色々と使い,何べんも変針して,沖に出たら最も見安い物標を選んで正確に位置を出して海図に記入し,この点をデバーチャーポイント(D・P)とする。機関をフル定速にしてあらかじめ決めていた変針目標に向けて針路線を引く。変針目標には,顕著な灯台・山頂・立標等を選ぶ。岬の端等は選ばない様にする。風潮流を加味して引いたあなたの針路は立派な推定針路になっている。変針点は選んだ目標が,出来る限り針路に対して直交する正横点が望ましい。同じ事を繰り返して,次々に針路線を引いて行き,目的港に近づいて行き,対岸も近づき之から先は入港の為変針,変速や行き会い船との会合の度合いも多くなると思はれる地点を,付近の顕著物標を対照に選んでランドフォール点(L・F)とする。港内に入って最初に桟橋にロープを取ったとき,又は投錨した時間を到着時間とする。出帆時間から到着時間までに要した総時間を,プロの間ではH・U・W(アワーズ・アンダーウエイ)と呼び,D・PからL・Fの間の時間をH・P(アワーズプ口ペリング)と呼んでいる。燃費計算や消費率を計算したりする時に便利である。以上の様なチャートワークの結果,航海計画は実際目に見える形となって来る。各点には予想通過(アビーム)時刻・各針路は,磁針方位・各点間航程を記入し,予定速力から総航海時間・総航程・総航海日程を集計する。我々船乗りの間では,「順は小さく逆は大きく」と言った通念があって,順潮や順風に依る利得は出来るだけひかえ目に,その逆は出来るだけ大きく見積る事も忘れてはならない。さて最後に大事な事が一つ残っている。狭水道を通ったり,予定針路付近の障害危険物を避けて安全航海が出来る様に,一目でわかる予防線を海図に記入したり色分けしたりする。この予防線のことを避険線と呼んでいる。

 

 

 

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