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また、彼らにとって、耐えるべきものと、耐えるべきでないものとがあります。そこのところを見あやまると、彼らの生活の全てが崩れます。彼らが乗り越えられないとき、また、耐えるべきでないとき、その状況を変えることを、あるいはその場から彼らを直ちに退却させることを、援助者はためらってはなりません。そして、それは急がなければなりません。影が、前に立ち上がるときです。支援の原点が、ここにあります。」

 

4. どのように暮らすのか、その1

―大阪市のグループホームの現況―

 

(1) 収入と支出とのバランス

グループホームの話に戻ります。入居する人たちが、どのような家にどのように暮らすか、その住まいの形や暮し方は、当然のことですが、収入に応じて決まります。支出、つまり生活の実質的な内容は、収入とのバランスで上下し、彼らは目に見えてそれを理解していくように思います。

全国どこでもそうでしょうが、大阪市においても、グループホームの家計の多くは火の車で、入居者たちは倹しい生活を余儀なくされているようです。私たちが行なった最近の調査でも、形態によって金額に大きな差異はありましたが、月々の収支のバランスや支出の中で各科目の占める割合はほぼ共通しており、いずれもギリギリのやりくりを重ねています。

まず住居を借りる場合、大阪の先の調査では、建物の保証金だけで1軒あたり50〜100万円かかる所が全体の40%、100〜150万円の所が28%という全国的にみれば高い割合になっています。そのほか、あっせん料や保険料などばかにならない額がかさみます。また、共同で使う設備備品類や、個人で使う物品等の購入費用を合わせると、前章で書いたように、1人100万円前後のお金を前もって用意する必要があります。

次に入居後、家賃や光熱水費など住居にかかる費用は、おし並べて総支出の30%を越えています。中には、45%の所もありました。家賃は平均して1人3万円強です。また、食費や生活一般にかかる費用は、総支出の約40%で、収入が少ない場合は50%を越えます。最低でも4万円は見込んでいるようです。結果として、個人が好きに使えるお金は、せいぜい2万円が限度(平均して総支出の12%)で、彼らの倹しい生活の様子がうかがえるというものです。貯金は、ほとんどできていないのが現状です。

 

(2) 収入を得る手立て

しかし、あらかじめ見込まれた支出の額に見合う収入がないから、グループホームでは暮らせないということはないでしょう。少なければ少ないなりに、住まいの形と暮し方が創意工夫されるはずです。

収入を得る手立てはいろいろあります。大阪市の例をとれば、まずグループホームに生活する企業就労者の平均月収は、ボーナスも含めて11万円でした。大都会で生活する費用としては低い数字です。さらに問題なのは、彼らの多くが日給制で、病気等で休んだ場合に収入の見通しが完全に断たれてしまうことです。別の手立てが考えられなければなりません。

最近になって、本人や援助者の幅広い活動が実って、大阪ではやっと障害の軽い人たちにも障害基礎年金がおりるようになりました。彼らにとって、これは大きな助けになります。

また、稼ぐあてのない人たちにとっては、障害基礎年金は唯一の確かな収入源です。これを利用することで、倹しくはあっても、グループホームの生活はまかなえるのです。平成9(1997)年度末現在の重度者の年金額は月に約8万2千円です。地方の企業就労者の平均手取り月収額とほぼ変わりません。現に、これに5千円ほどの作業工賃を加えて、大阪市内にマンションを借りて、4人の重度の障害をもつ人たちが共同生活を続けている例があります。

 

 

 

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