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自分が貢献に熱心な企業の商品を買わないことも関係している。つまり、市民は外側ではなく企業と政府とNPOの真ん中にいて、それらにどうアプローチするか、どういう市民活動をするかという位置にあるべきなのではないか。

山田 企業人や学者でも、サラリーの見返りとして白分の仕事をするだけでいいんだろうかという人が出てきています。では一体何をしたらいいか。出家はできないが、在家で念仏を唱えたりお布施をするぐらいはできるかもしれない。だから、仕事を持つ一方でどういう社会活動の選択があるのか、それに対してどういう形で個人としてかかわる余地があるかを考えていったらいいと思います。

 

加藤議長 二日間の皆さんのご意見を伺いながら、感想を五点ほど申し上げさせていただきます。第一に、個の問題について。私どもは、個人主義というのは無条件にいいものだという前提を持っていますね。本当にそうか。そういう信仰は捨てたほうがよろしいのではないか。二番目は、日本のフィランソロピーの現状をどう認識するか。私としては、この伝統は戦後も築かれてきており、先はもっと明るいと思います。世界的に見て遅れているわけでもない。その実績もあるのだということを認識したい。三番目は、「日本型」フィランソロピーといったような考えはやめましよう、ということ。たとえば、ロックフェラー財団はアメリカ型フィランソロピーと言うでしょうか。四番目に、制度と精神の問題は切り離して考える必要があります。行政、財政制度すべてを含めた制度問題と、それを動かしていく精神の問題は別だということです。

最後に、フィランソロピーの問題を道徳運動にするのはやめましょうという提案をさせていただきたい。これはいいことだ、これをやらなかったら具合が悪いということになってくると、お互いつらいんですね。着実な日常の営みとしてフィランソロピーを考えていきたいというのが感想です。

[文章 FORUM Em.Bridge '97事務局]

 

 

 

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