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はなく、どこにでもあるのです。組織の中の議論のあり方が問題であって、お互いにもっと素直に様々なことを議論していればよかったのではないか。お互いに隠し合うのは、孤独で寂しいという面が実はあるのではないか。もっとオープンディスカッションを組織の内外で進めていくのが新しいシステムが生まれるための条件になるのではないか、という印象を持ちました。

岸井 官庁を取材していて痛切に感じるのは、日本が今、国家としての目標を失ったということです。中央集権制度と過度な官僚支配が壊れていく過程にあることは認めざるを得ないのではないか。しかし、それに代わるものがなかなか生まれていないということが、今、日本が混迷している最大の原因だと思うんです。そういう中で今わき上がってきているのが、民間の国会と行政の監視委員会をつくるという動きです。マスコミ一社では無理ですが、一つのショック療法あるいはアンチテーゼとしてやれないだろうか。その場合はどうしてもNGO、NPOの協力がなければなりません。

戦後のマスメディアというのは徹底的な公正公平・客観報道を基本にして、積極的に何か一つ発言するとか、行動するということを厳に戒めてきました。でもそれではもう読者も視聴者も満足しません。積極的に発言し、行動するということが一つの新しいメディアのやり方ではないでしょうか。

フクシマ 私は必ずしもNPOが政府に反対する勢力として必要だと言いたいのではありません。NPOはむしろ政府やその政策を補足したり代替案を出すことをすべきであって、全て政府に任せるということ自体、民主主義社会ではおかしいというふうに思っているのです。

小島 今、日本の経済社会が問われている問題の一つとして、日本が各国とうまく調和のとれる市場経済を本当に打ち立てられるかどうか、そのときどういう要件が必要なのかということがあります。それにはあまり政府が規制しないということと、市場に参加する企業、個人が健全であって、自己責任を持てるということが必要です。しかし、事故責任をとれるための要件というのがまた一方にあります。市場活動に必要な、政治活動あるいは投票行動に必要な情報が十分提供され、その情報に平等にアクセスできるシステムが担保されていないと、民主主義のシステムも市場経済のシステムもうまく機能していかないと思います。

これをどうやって確保したらいいのか。例えば官僚には裁量的な権限、あるいは法に基づいた権力があるから、情報提供を強制できる。しかも、その情報は自動的に独占される。そこには健全な民主主義に参加する個人も生まれないし、健全なマーケットに参加する個人や企業も生まれない。そういう点で情報のありかたというのは、今後非常に重要になってくると思います。

早瀬 来年へのテーマに関連しますが、われわれはNPOやNGOを市民活動、市民団体と呼びますね。NPOを三つ目のセクターとして、企業・政府・市民団体という対置でよく議論します。しかし実際には、市民は企業や行政の外側にいるものではない。例えば企業がなかなか社会貢献をしてくれないということを批判しても、それは消費者としての

 

 

 

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