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三枝 何かの集いで、私は義務教育撤廃論を提唱しました。現在、国は小学生に年間一〇〇万円近いお金を払っています。そのお金を本人にあげてしまえばいいと。それで校定制度をつくって、どういう学校を選択してもいいという自由を与える。東大の法学部を目指す学校があってもいいし、職人になりたい人は職人養成の学校へ行けばいい。

アメリカではチャータースクールというのが始まりました。公的なお金で私立学校を運営するという教育のあり方です。これはすごく参考になると思います。例えば、校長先生の罷免権は教育委員会ではなく理事会にある。国の方針ではなく、その学校の方針で教える教科を選択できる。つまり、文部省が要らなくなる。黒人だけの、黒人史しか教えない学校もできました。そこではアメリカ史を教えないことが問題になっているのですが、そこの学生の親たちは、子供たちがみんな不良からいい子に育ったと言っています。これは一つの注目すべき結果です。

橋本 教育に関しては、教員側の匿名性を何とか撤廃したいと思っています。つまり、同じことを教えるにしても、誰が教えたかをはっきりさせたいということです。私は理科系で、サイエンスというのはある意味で普遍的な知識を伝えるものですが、今はそれが非常に行き過ぎている。苦は何々学派というのがたくさんあって、どこの塾に入ったか、誰に教わったかということが非常に大事でしたが、今は文部省学派一つしかない。それをやめるには、教員側一人一人が、自信を持って自分の色をつけるつもりで教える。特に理科系の大学院は、一日中一人の教員と一緒にいるということが多いので、その個人の色は自信があれはつけられる。けれども、失敗や無駄を恐れない考え方がまだまだ少ないですね。

山下 産業界からの立場で率直に言いますと、最近の日本は全般に元気がなく自信喪失の状態です。昨年の会議でも官僚の腐敗や民僚の問題などが出ましたが、その後一年経ってもますます悪い方向へ進んでいる。とくに、従来規制業種とされていた分野が弱い。この辺の仕組みを変えて国際競争力をつけるには、まず制度に手をつけるべきだと思います。手始めに、東大を頂点とする旧帝大といわれる大学は全部民営化すべきではないでしょうか。

また、私が属する航空業界では、英国航空が年間一〇〇〇億円くらいの利益を出し、世界でひとり勝ちしています。ここの会長のコリン・マーシャルは、ハイスクール出身です。同じくヴァージン・アトランティックのリチャード・ブランソンは中学校出身です。そういう起業家がどんどん出ています。こうした学歴にとらわれない起業家を受け入れる土壌は、果たして日本にあるでしょうか。権威主義に陥り、金太郎飴のような人間ばかりつくってきた日本の教育を、個人の持つ力を発揮しうるシステムに変える必要があります。どこかでメスを入れないと、日本は本当にだめになるのではないでしょうか。

茂木 今の日本の教育システムに、フレキシビリティーがなくなってきているという弊害があることはわかります。しかし、ある程度まではきちんと基礎的なことを教えて、その上で個性が大いに伸ばせるシステムにしたほうがいいのではないでしょうか。日本の義務教育は今非常に評判が悪いですが、識字率の高さや基礎的な計算能力の高さといった点は、アメリカの大統領もかなり注目をしているわけです。ですから、オール・オア・ナッシングではないだろうと思います。

千本 私はマルチメディアやインターネットなどベンチャー関連の教育者として、年間

 

 

 

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