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テーマ(2)第三の力としてのNPOへの期待

 

地球市民時代のパートナーシップ

 

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世古一穂(参加のデザイン研究所代表)

 

NPOとは社会的使命と専門性を持ち、民間で活動する非営利組織のことである。専属のスタッフを擁してプロフェッショナルな行動も行い、市民事業の一端を担う。

NPOの社会的役割は、これまで官の専売特許であった公共―パブリックの領域―の仕事や社会的サービスのもう一方の担い手となることである。公共的で公益的な社会サービスは行政だけが担うのではなく、NPOと役割分担していくという考え方である。つまり、政府や地方自治体からのNPOへの「分権」が必要となる。

NPOは、ボランティアと混同されがちだが、ボランティアとは個人のことであり、組織としてのNPOがあってボランティアは初めて社会的な力になる。NPOが育つことなくボランティアだけ増えても、ボランティアは行政の下請けや手伝い、もしくは自己満足の世界に終わってしまう。NPOは市民の思いを形にする社会的しくみである。

激動の世紀末。社会による救済という幻想が後退し、「歴史の境界」を超えるほどの大転換点に生きているという実感を深める昨今である。これまでの社会システムが崩壊し、それを支えてきた価値観も揺らいでいる。

しかし、一人ひとりがどのように生きたいと願っているのか、そのために社会はどのような環境を作るべきなのか、つまり、「どのような社会をめざすのか」という社会的コンセンサスは不在である。

そうした状況にあっては、これまでの公平・平等を原理とする行政では対応できない領域、営利企業ではできない領域が拡大する。市民のニーズに先験的、実験的、即応的に対応できる、NPOの社会的役割が高まる。そうした時代の変化に対応するためには、国、都道府県、市町村の各レベルで官と民がそれぞれ担う公共的分野を整理し、行政とNPOとがその特性に応じて役割分担するという発想が不可決となる。

その意味で、これからはNPOセクターが育つ社会環境整備に力をいれる必要がある。ただし、間違ってはいけないのは、個々のNPOを行政が直接育成することではない。環境整備をする上で大切なのは、行政セクターからNPOセクターへの分権という視点と、個々のNPOを支援するさまざまなNPO(インターミディアリーという)とのパートナーシップをもつという視点である。勿論、免税制度を含めた税制の改革や分権のための社会システムや支援方策が必要である。しかし、行政セクターとパートナーシップで地域やまちづくりを進めていけるさまざまなNPOセクターが地域で育ち、自立するためには、資金、情報、人材育成等多くの課題が山積している。それらをNPOセクター自身が解決していくためには、NPOを支えるさまざまな専門的なNPO(インターミディアリー)が不可決と考える。

 

 

 

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