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個性を許容する社会へ

 

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大田芳枝(労働省女性局長)

 

教育の専門家でない私にも、「個性」を伸ばす教育の必要性・重要性はよく理解できるのだが、それ以前に私は、日本社会がもっと個々人の個性を許容する社会になることが不可欠であると痛感している。

ルーズソックスに代表される高校生たちのファッション、就職活動時のリクルートスタイル、人と異なる故のいじめ、外国人に対する特別扱い、内と外との使い分け等々、人と同じであることに価値が置かれ、個性的でないことを良しとする風潮が満ちているように見える。そういう中で、教育だけが「個性」を求めても成功しないであろう。

私は、人々がのびのびと「個性」を発揮出来る社会を作ることが求められていると思う。人はそれぞれ違うことを認め、

いろいろな価値観や考え方があることを認識する。一人ひとりが自分の意見を臆することなく述べられるようにし、異なる考えに対しては、自分の考えを押しつけるのではなく、議論をし説得する。多数決に従うというルールの確立した、いわゆる民主主義社会が、人々が住み易い豊かな社会なのだと思う。戦後五十年を経たけれど、民主主義社会といえる水準にわが国があるのかと疑問に思う。

その中で教育は、かけがえのない人生を「生き生き」と生きること、即ち、自分を大事にして、自分がやりたいことに努力を重ねることが重要であると教えるべきだと思う。自分の人生を自分で選択し責任を持つことが、独立した個人として価値のあることであり、大人になることだとはっきり教えることである。

個が確立され、しかも他の個の領域は侵さない成熟した社会になれば、人々は個性的な国民・市民としての生活が出来、わが国の顔がはっきりしてくると信じている。

 

 

 

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