日本財団 図書館


樋口 まあ、減ってはいません。仙台や広島など、地域が拡大してきていますから。

加藤 それは会社としての活動ですね。個人の加盟者もいらっしゃいますか。

樋口 個人でも入れます。その場合も収入の一%以上を出していただく。

それからもう一つ、私が副会長をやらせていただいているメセナ協議会というのがあります。何らかの社会貢献を目指す約七〇〇の企業が加盟しているわけですが、協議会への寄付に関しては免税されることになっているんです。

協議会は、援助のお願いに来られる側の中身には立ち入りません。だいたい一日に七〇名ほどの方が来られますが、審査しまして、いいなということになればオーケーする。

これには、二つの意味があります。世の中で認知されるということに対する喜び。それからもうひとつは、会社のお金が使われるわけですから、会社の中での納得性、それから株主に対する納得性の問題です。そのような新しい問題が出てきたのです。

土野 数字的には年間どのくらいなのでしょうか。この前、テッド・ターナーの基金のことをちょっと調べてみたら、九六年末で彼の個人資産は三二億ドルでした。その後九カ月ぐらいでタイムワーナーの株がどんどん上がって、二二億ドルになったらしい。その三分の一、一〇億ドルを国連に寄付したらしいですね。

樋口 協議会にはいま七億八三〇〇万円ぐらい集まっていますね。

土野 日本ではNPO法案が通りましたが、いちばん大事なことが抜けている。寄付をする人、それから寄付を受け取るNPO側に、税制面での優遇措置というのが入っていないわけですね。この点で、アメリカとの比較がよくされます。先日の朝日新聞の社説によれば、アメリカでは一〇兆円の個人寄付があるが、日本では四〇〇億円ぐらいしかないと。フィランソロピーが日本社会で市民権を獲得するためには、税制を改革することが必要なのではないかという指摘なのですが。

樋口 法人税がアメリカ並みの四〇%に、それから個人の所得税の最高税率が六五%から五〇%ぐらいに下がってきましたら、みんな喜んでフィランソロピーを考えるのではないでしょうか。

こういう話もあるんです。京セラの稲盛和夫さんとオムロンの会長の立石信雄さんと私とで、メセナ活動について対談をしました。すると聴衆の一人、ある有名な企業の経営者がこうおっしゃった。「稲盛さんは自分で稼いだお金だからいくら寄付してもかまわない。立石さんはお父さんが儲けたお金だから、どんどん寄付して下さい。そこへいくと、樋口さんは会社で収益が大変上がったからといって、寄付ばかりするのはおかしいじゃないか」。「それではあなたはどうしているのですか」と聞きましたら、「私のところは、税金をきちんと納めています。税金で国がやればいい」とおっしゃるのです。やはり、そういう感覚があるんですね。

ハーバード大学の学者でも、「税金を払っているから寄付をする必要はない。むしろ日本のように所得税をうんと取った

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION