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4. 当面の課題と今後の展望

 

(1) 里親の意識の向上と地域里親会活動の推進

里親制度は、従来、ボランティア、奉仕という考えが強調され、里親の善意に頼ってきた部分が大きかった。しかし、「里親等家庭養育運営要綱」の全面改正により、里親制度の理念の改正や研修の強化等がなされたこともあり、里親を児童養育の専門家として活用し、幼児の個別的処遇により、より適切に育成できるであろうケースを、できるだけ里親に委託するようにしようとする傾向が強くなってきている。

それだけに、里親自身も、自分の子供がほしい可哀想だという情緒的なものだけでなく、児童養育の知識・技術を勉強し専門性を身につけなければならなくなってきている。また、一方3日里親、フレンドシップファミリー等の普及等を通して、里親の一般化にも目を向けて行くことが必要であろう。

そのためには、里親の意識と養育知識技術の向上にも里親制度の普及にも、地域里親会活動が極めて有効であることを考えて、里親促進事業や研修会等を活用することが望ましい。

(2) 短期里親の活用

人間関係の疎外、核家族化の進行等一般社会の動きに伴い、両親の病気等によりー時的に養護に欠ける児童が発生し、いわゆる短期里親へのニーズが増加している。

すなわち、最近は、両親のいない児童(いわゆる孤児)の割合は減少しているが、わが国の社会・経済情勢の著しい変動の中で進行した都市化、核家族化傾向、或いは養育意識や生活様式の変化等により核家族における母親の出産あるいは疾病などにより、児童の養育が困難となる事例が増加している。また、一方では親の失踪、捨て子、乳幼児の殺害、虐待などの事例は跡を断たず、児童福祉関係者はもとより、社会的にも問題視されている。これらの要養護児童のうち、幼児の占める割合が高くなっているため、児童養育者の資質の向上が強く叫ばれているのである。

そこで、核家族化傾向の中で主として乳幼児をもつ保護者の養育機能が低下しやすい最近の状況に対処するために、今後一層里親制度を普及し、これらの児童の適切な養育を図る必要がある。

従来、ともすると里親に委託される児童は保護者のいない児童など、比較的長期間にわたって監護に欠けるものが主であったが、とくに最近の核家族化の進行に伴い、比較的短期間ではあるが家庭養育機能の低下による要養護児童の増加に対処するため、昭和49年9月から短期里親制度の運用を図ることとし、その周知並びに普及の徹底に務めている。平成8年9月末日現在で短期の登録里親574人、委託里親168人である。また、56年度から国の予算措置で短期里親開拓事業が始められたことでもあり、この面の一層の推進が期待されている。

(3) 心身障害児里親の振興

心身に障害のある児童を里子として養育することは、欧米先進諸外国では当然のこととして普及している。わが国では、少数の篤志家が実践しているに過ぎないが、数県でこれら里親に手当の加算をするなど振興努力の萌芽がみられる。

国においても、昭和57年8月の中央児童福祉審議会障害関係三特別部会合同会議要望書「心身障害児(者)福祉の今後のあり方について」の中で、「地域社会に根ざした福祉施策の展開として、心身障害児に対する里親制度の活用や小規模施設の措置を推進することが必要であり」と表明され、こうした情勢を受けて、昭和60年、昭和61年度の2年計画で「障害児家庭養育機能に関する研究」を行った。この研究結果を踏えて近い将来何らかの施策のとられることが期待される。(参考資料9参照)

 

 

 

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