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普代村の在宅医療,在宅ケアを発展させるために

 

  岩手県・普代村国民健康保険診療所

  遠野 千尋・蛇走フサ子

  大屋敷八千代・道下  幸

  上野 京子・横田 雅英

  松家 昭孝

 

要旨

近年の医療現場では,国の施策として,病院への長期入院を減少し,老人保健施設や,特別養護老人ホーム,そして家庭への退院を推奨するという側面と患者のQOLを重視するという側面とで在宅医療,在宅ケアヘの関心は高まっている1)。したがって,普代村でも在宅療養者を支え家族のQOLをも高める方法を考えなければならないが,行き着く結論は医療者としての村内唯一の医療機関である当診療所と福祉サービスのスタッフ,そして行政との連携に尽きるであろう。しかし,これまでの当診療所の在宅療養者への対応の仕方や,現在の普代村の福祉サービス活動を振り返ってみると,医療と福祉の連携の不十分さが浮き彫りになってくる。そこへこのほど平成9年4月より,在宅介護支援センターが開所し福祉に関する相談,情報提供の窓口が一本化した。このことは,以前よりも医療側と福祉サービス側との在宅療養者に関する情報交換の容易さをもたらし,若干,連携の改善が認められてきた。

 

I はじめに

普代村は,岩手県沿岸の北部に位置し,北に30km離れた久慈市を中心とした久慈医療圏に含まれる(図1)。人口は平成9年4月1日現在,3709人で65歳以上では746人となり全体の20.1%と,典型的な過疎,高齢化が進行している漁業,農業を中心産業とした村である。

このような住民の状況で,在宅で介護をすることは,家庭状況や労働力不足によるマンパワーの問題で非常に困難な場合が多い。したがって,地域の風潮として高度の看護を要する患者は自宅でなく施設へ,という考えが根強くある。そのため村内では,繁雑で技術を要するような介護を必要とする在宅療養者は少ない。多くの在宅療養者は脳血管疾患後の寝たきりで,医療行為を要するとしても,経鼻栄養チューブや膀胱カテーテルの交換,喀痰の吸引そして褥瘡の処置といった例がほとんどである。

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