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E. 患者転帰

ほとんどの症例で救急車到着後,救急病院への搬送を余儀なくされたが,発作性頻拍症の2例と,低血糖昏睡の1例は現場にて治療し,めまいの1例と低血糖昏睡の1例は当診療所外来に搬送し治療した(表4)。

F. 予後

当診療所の緊急往診で,現着時心肺停止,呼吸停止などの重症患者に対しては,蘇生延命効果があったとしても,結局救命はしえなかった(表5)。

 

V 考察

A. へき地の救急患者について

へき地の救急患者の医療機関受診方法を大別すると,

1. 家族など第三者の運転する車で運ばれて最寄りの医療機関を受診する場合

2. 最寄りの医療機関に往診を依頼する場合

3. 救急車を呼ぶ場合

などが考えられる。1は車を運転できる同居家族がいる場合が多く,2,3は頼れる人が少ない老人や一人暮らしの人,また重症で動けない場合などが多いと思われる。

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へき地においては,救急車を呼んでも到着に時間を要するような場合,地域の医療機関の往診もしくはなんらかの緊急受診体制が必要ではないかと思われる。当地区では救急車依頼後到着までに約30分を要し,実際救急車がその本来の目的を果たしているとは言いがたい状況である。

平成6年4月現在,全国消防署の救急車総台数は4,901台,人口約24,000人に1台の割合1)で,人口1,500人の当地区には到底配置できるものではない。へき地においてはその地域の医療機関が救急医療に対して負う役割が大きいと思われる。なかでも緊急往診体制やドクターカーの配置など現場医療体制の確立が望まれる。

当診療所でも往診車の充実をめざし現場医療体制の強化に力を注いでいるが,都市部のドクターカーと比較すると,マンパワーの不足,除細動器,人工呼吸器など高価医療機器の不足は否めない。しかし現場到着時間に関しては,大阪府立千里救命救急センターのドクターカーの覚知から同時出動の場合の現場到着平均時間が約13分と報告されている2のに比べ,当診療所の現場到着時間は約10分程度と思われ,むしろ短縮されている。

 

B. 往診という診療形態について

往診は,制約の大きな診療形態のひとつである。医療設備の不足,診療条件の悪さなど,日常診療に比べると,往診におけるハンデキャップは大きい。まず患者は,ベットではなくて床の上に布団をしいて寝ていることが多く,診察,処置を行う際に非常に不都合である。また部屋の明るさ,広さなど環境の条件も不良な場合がほとんどである。ましてや屋外での往診治療は衛生上の問題や天候,気温などの関与も大きく,さらに不利である。このような悪条件のもとでは,診療は必要最小限にとどめるべきであろう。

 

 

 

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